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インタビュー

2021.01.25


世界最大級のコンテンツマーケット「MIPCOM 2020」が昨年オンラインで開催――その概要とオンラインによるメリットとは(紹介セミナーより再構成)
>>「MIPCOM」プレゼンテーション>>セミナー受講者からの質問に答えるQ&Aセッション
 世界最大級のTVおよび、ネット配信を含む映像コンテンツマーケット「MIPCOM 2020」が2020年10月5日~11月17日までオンラインイベントとして開催されました。開催に先立ってVIPOでは、マーケットを20年近く見つめ、日本のコンテンツ市場の国際化のためにこの15年来尽力されているリード・ミデム*パリ本社のマーケット開発ディレクター、テッド・バラコス氏をお招きし、オンラインマーケットならではの特性、具体的な参加方法やバリューについてなど詳しく解説いただきました。今年、参加をご検討されている方にはぜひ参考にしていただきたく、今回は実施されたセミナーの内容を再構成したものをお届けいたします。
*リード・ミデム社は創業以来50年以上にわたり、BtoBの国際的な見本市を開催。お客様ひとり1人を繋ぐネットワークの場を提供しています。

(※本セミナーは、2020年9月25日に、「コンテンツグローバル需要創出促進・基盤整備事業費補助金(J-LOD)」の一環として実施されました)


 

 

 

 

 

「MIPCOM」について

 
私はリード・ミデムでMIPCOMおよびMIPTVのディレクターの一人を務めております、テッド・バラコスです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
MIPCOMは世界で最大級のテレビ番組に関連する見本市で、カンヌで長きにわたって開催してまいりました。現在では100社以上が集うマーケットとして、日本の関係者もたくさんいらっしゃいます。しかし今年は、世界のこの状況からカンヌに物理的に集まることが難しくなってしまいました。多くの人々が自粛のSTAY HOME期間中にテレビを見る機会が増えました。しかしテレビ業界における皮肉は、テレビ番組に対する需要が高まっている一方で、番組を制作する部分がシャットダウンされてしまったことです。テレビ番組の制作に関しては現在少しずつ回復傾向ではありますが、MIPCOMにおいてもその状況が垣間見られると思っています。そういった中でオンラインのソリューションを提供しようと動いてきました。
 

オンラインとなったMIPCOM
 
まず、「MIPCOM」には2つの役割があります。
1. 上映会やカンファレンスをする場を提供
2. カンヌという場で参加者の皆様がBtoBのミーティングをする機能を提供
 
この2つがオンラインでどのように実施されるかというと、まずオンライン上でエントリーしていただきます。2020年の9月現在、データベース上に340の出展者、2000程のバイヤーが登録しています。あと2週間で開幕ですが、これだけの参加者が集まって来ています。
 
MIPCOMでは、アニメ業界や子供向けの番組に携わっている方向けのMIP Juniorというプログラムもあります。そこでは1000以上の子ども向け番組のバイヤーが集まり、カンヌでスクリーニングを楽しむ形になっています。今年はそれを全てオンラインで行います。
 
MIPCOMオンラインがスタートして最初の1週間はウォームアップウィークと呼ばれるものがあります。これはプログラムやカンファレンスに関するプレビューを見ていただく期間です。
 

ウォームアップウィークについて
 
ウェブサイトから参加者登録を行うと、登録済みのバイヤーやセラーらとミーティングの予約ができるようになります。ウォームアップウィークが始まるとコンテンツが公開され、カンファレンスを視聴したりバイヤーとのウェブミーティングのアポイントを取ったりできるようになります。そしてMIP Junior Screening Libraryも公開されます。
 
さらにプロデューサーむけのプロダクションファンディングという資金調達を可能にするセッションも行われます。
 

 

MIPCOM WEEK
 
ウォームアップ期間が終わると、様々な活動が始まります。ミーティングがスケジューリングされ、オンラインプラットフォームの中でバイヤーやセラー、プロデューサーの方たちがチャンネル側とミーティングすることができます。また参加者の皆様に対して「このような方とミーティングをすればいいのではないか」というAIによるおすすめ機能も付いています。MIPCOM WEEK中の様々なミーティングはズームを通じて行います。オンラインの開催の一つのメリットは、ミーティングを設定するとそのスケジュールが参加者のアジェンダに追加され、そこから自動的にミーティングがセットアップされることです。
 
MIPCOM WEEKはミーティングに加えて、様々な基調講演があり、中にはNetflix共同CEOのテッド・サランドスさんの講演もあります。スクリーニングもさまざまなものが行われますが、中でも注目なのはグローバルアップフロントです。主要なテレビネットワークのNBCやITV、BBCスタジオがプログラムを各社30分ずつスクリーニングし、最新のコンテンツを見ることができます。
 
主要なカンファレンスのひとつに、SONYと組んで行っている「テック(テクノロジー)&クリエイティビティ」と呼ばれているものがあります。これはさまざまな面白いトピックを取りあげていて、今年ではパンデミック禍の下、どのようにテレビ番組の撮影を行うか、リモートなロケ―ションで撮影をするにはどのようにしたらよいかについて話し合われます。こうした基調講演などのコンテンツが開催期間中プラットフォーム上で見ることができます。
 

MIPCOMオンラインのインターフェース
 


(画像A)

 
MIPCOMオンラインのツアー方法のお話をします。(画像A参照)
まずはMIPCOMのWEBサイトに入り、ID/PWを入れてログインします。そこからハブに入るとオンラインのデータベースにショートカットでアクセスが可能になり、スクリーニングやカンファレンス、ミップジュニアのライブラリーなど、様々なコンテンツを見ることができます。
 
オンラインデータベースでは、バーチャルエグジビターページという、出展者の方が自分たちの情報と動画をアップロードして参加者に対してアピールできる場があります。そこには出展者のデリゲーションの名前を全て書くこともでき、またデータベース上からカンファレンスに参加することもできるので、とても使いやすいナビゲーションのサイトとなっています。
 

バーチャルエグジビターページ
 
もし皆さんがコンテンツの権利保有者やディストリビューター、放送局の方だった場合、バーチャルの出展ページにご興味があるのではないかと思います。(画像B参照)
 


(画像B)

 
このページでは皆さんの企業に関する動画をアップロードすることができ、その企業から誰が参加しているのかが分かる参加者リストがあります。
 
ミーティング相手のおすすめ機能や他の参加者に見せたい予告編等の動画を20個までアップロードすることができるので、ご自分がもつコンテンツを紹介するページにもなります。
 

バーチャルパビリオンページ
 
最後のページはバーチャルパビリオンページの紹介です。各国ごとにパビリオンが設定されている形になっています。(画像C参照)
 


(画像C)

 
日本パビリオンでは東京や大阪などのキー局や様々な地域をフューチャーした多くの地方局の方々にもご参加いただきました。現時点ではすでに30以上のパビリオンが登録されています。このパビリオンの中にそれぞれ参加者の企業はバーチャルエグジビターページを持つことができます。
 

参加料金について
 
一番重要な参加料金についてご説明いたします。
今回のMIPCOMオンラインは個人として参加することも可能です。個人での参加費用は3万円ほど。法人としてバーチャルエグジビターページをもつ参加者は24万6千円です。このコストは例年よりも安くなっていますので、どちらかで参加していただければと思っています。(※2021年度の料金は変わる可能性があります)また、バイヤーの方はコストがかかりません。
 

オンラインのメリット
 
オンラインでの国際的な見本市に参加する最大のメリットは時差や移動のコスト、ホテルの確保など気にせずに、好きな場所から参加できることです。
 
また、自分でアジェンダを設定することもできるので、時差の違いから寝ている間にミーティングのリクエストがこないようにブロックすることができます。オンラインでの開催は対面のミーティングに取って代われるものではありませんが、この時代のもと、オンライン開催だからこそうけられるメリットがあります。このような世の中でもテレビ番組の業界に携わる人たちが様々な形で国際的なマーケットで繋がることは大変重要だと考えています。
 

最後に
 
もし、皆さまがディストリビューターとしてこれまでずっと仕事をされてきた人であれば、今回ご紹介したプラットフォームにぜひ参加いただき、活用してください。このプラットフォームに存在していることが大変重要です。バイヤーはこの時期にコンテンツを探し、買い求めるためにMIPCOMに参加します。このような機会を使ってバイヤーの方とコミュニケーションをとってください。
 
マーケットの開催期間、バイヤーは皆さんと会うためにMIPCOMオンラインにやってきます。今までMIPCOMに参加していなかった方も是非参加していただきたいと思います。MIPCOMオンラインはリスクもコストも低く参加することが可能です。その中で国際的な市場に携わることができるのは大きなメリットだと考えています。

 

Q&Aセッション

Q1. オンラインマーケットの場合、時差の問題が大きいかと思いますが、貴重なミーティングを逃したくありません。タイムラグの問題を解決するための具体的な対策や工夫があれば、教えてください。
 
Ted  参加者の皆さんはご自分のアジェンダを自分でプログラミングすることができますので、日本から参加するみな皆さんは、ミーティングをしたい相手の国にあわせて、時間を設定することができます。プラットフォームにアクセスしていただくと、日本の方には日本時間でタイムテーブルが示されるようになっていますので、ミーティングができない時間はスケジュールをブロックしてください。例えば1日目はロサンゼルスの関係者とのミーティングを済ませてしまいたいと思った場合は、ロサンゼルスの時間に合わせて午前1時まで家からミーティングを設定し、2日目は東海岸の時間にあわせて、設定することが可能です。
 

Q2.  MIPCOMへの参加を検討しています。弊社のコンテンツがTVプログラムに直結するようなアニメなどではなく、日本の和楽器を使用したパフォーミングアーツのような総合舞台芸術です。そのようなジャンルからの参加者はいますか?現在、様々なものがオンライン化されているので(我々の舞台芸術も同様)面白い反応があるのではと思っておりますが、いかがでしょうか?
 
Ted  LIVEや音楽であればテレビ業界にとってはとても面白いジャンルです。音楽分野は配給したいプレイヤーがたくさんいます。
 
MIPCOMにおいても音楽というジャンルが設けられています。過去のMIPCOMでは日本のパフォーミングアーツのグループ「白A」という方々が実際にMIPCOMでパフォーマンスをしたこともありました。このグループはパントマイムと音と照明を使ってパフォーマンスをするグループで、私はとても感動をしましたし、参加者の方も引き込まれていました。このようにMIPCOMに参加することは素晴らしいプレゼンテーションだと思います。実際に、ぜひ「白A」を放送する権利を買いたいという参加者がたくさんいました。ご質問者の方にも是非参加してほしいと思います。
 
音楽のジャンルがあると申し上げましたが、音楽の分野に興味を持っている参加者を自ら探してみてください。それがMIPCOMでは可能なのです。
 
昨年の例ですが、時代劇のプログラムで参加いただき、ワールドプレミアムで仲代達矢さん主演の『帰郷』という作品を世界の方々に観ていただきました。それにつながる、和楽器などの伝統芸術は日本が積極的に出していかないといけない分野だと思います。MIPCOM主催者としても、マーケット全体を盛り上げられたらと思っています。
 

Q3. 参加を検討しているテレビ報道ディレクターですが、国際共同製作での番組開発も検討したく、マーケットへの参加を考えています。「テレビ局は、コロナウィルスにおけるパンデミックでどう制作するか、番組展開できるのか?」というカンファレンスもあると聞きました。その分野で他にもあれば教えてください。
 
Ted  先ほどのプレゼンテーションの中ではテック&クリエイティビティについてお話しました。そこではリモートの制作経験について話してもらう機会があり、その経験を互いに語ってもらうセッションがあります。
 
マッチングイベントで確定しているものは、今年はカントリーオブオーナーとして、韓国が選定されていますので、韓国のプロデューサーとお会いすることができるイベントを企画しています。
 
制作会社の中でも大きな会社が登録をしているのがMIPCOMの特徴で、例えばフランスの国際制作・配給会社のBanijayです。今年は既に25人が登録しています。また、Banijayの方にはシニアエグゼクティブの方も登録されています。
 
このような方たちと国際共同製作のミーティングを行うことができます。先ほどセラーとバイヤーとのミーティングが設定できる説明をしましたが、他にも共同製作をするためのミーティングも設定いただければと考えています。そしてバイヤーの多くは同時に権利獲得や共同製作に興味がある方が大変多いので、有益なミーティングをもつことができます。
 

Q4. プラットフォームへの登録時に何らかのエラーが生じたときなど、サポートデスクのような窓口はありますか?また、それはすぐに分かるようになっていますか?
 
Ted  はい。サポートはあります。
WEBサイトにもサポートがあることがわかりますし、バーチャルエグジビターページから編集することができます。私たちはカスタマーヘルプチームを用意していて、そこからも皆さまにサポートを提供することができます。
 
またマーケットを運営しているリード・ミデム社は東京にも事務所があります。時差もありますので、そちらに問い合わせていただき、本社パリにつなぐことも日常的に行っております。わからないことがありましたら、ぜひお問い合せください。また資料のご用意もVIPOにございますので、ご覧になってみてください。
 
MIPCOMにご興味を持たれ方、参加をご検討される方は下記お問い合せ先までご連絡ください。
 

 
【お問い合わせ先】
リード・ミデム 東京オフィス 
TEL:03-6264-0193
小野 理理 (lily.ono@reedmidem.co.jp
坂井 拓也 (takuya.sakai@reedmidem.co.jp
 


 
 

Ted Baracos (テッド・バラコス)氏
リード・ミデム パリ本社  マーケット開発ディレクター

  • 1997年にリード・ミデムに入社。出身はカナダバンクーバー。入社時は、当時世界に先立つCD-ROM、いわゆるニューメディア関連のイベントのディレクターとして活躍。
     
    2005年以来現在のMIP/MIPCOMの幹部構成メンバーとして同マーケットの新たな開発や発案などに携わり現在に至る。特にここ数年来フランス、カンヌでの開催以外に各国での見本市の立ち上げの責任者として新しいマーケットを発案の時点から運営、軌道に乗せる事業に携わる。これまで南米メキシコのカンクーンおよび中国杭州でそれぞれの国あるいはその地域のコンテンツビジネスの国際化に特化した見本市の新たな主催、運営をしてきた。
    ブリティッシュコロンビア大学出身、カナダ、モントリオールのマギル大学にてMBAを取得。現在、デジタルメディアのヨーロッパアカデミーのフェローである。


 
 


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