VIPO

インタビュー

2016.11.25


世界108ヶ国・地域から1万4千人が来場した映像コンテンツの国際見本市「MIPCOM2016」。日本が初めて務めた「Country of Honour(主賓国)」の振返り
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世界最大規模の映像コンテンツの国際見本市として知られる「MIPCOM」が今年も10月にフランス・カンヌで開催されました。今年は日本が「Country of Honour」に選ばれ、日本の映像コンテンツや番組フォーマット(※1)、さらには技術を広く世界に紹介。「Country of Honour」の運営に関わった3名にVIPO事務局長・市井がインタビューしました。

(以下、敬称略)

映像コンテンツを海外へ。現場で感じた熱量、そして、世界に向けてすべきこととは

世界から見た日本の映像産業の立ち位置とは?

日本コンテンツを発信する意識は50年以上前から

市井)日本の映像コンテンツのこれまでの海外展開に関して教えてください。

宮澤)日本コンテンツの海外展開は60年代にはじまったと言えます。最初に世界で受け入れられたのはアニメです。アジアを中心に放送され、早いうちにヨーロッパにも浸透していきました。実写でいち早く人気となったのは、ドラマの「おしん」。80年代は、アジアのどこへ行っても「おしん」と言われるほど有名でした。そして、中国、台湾、香港周辺の東アジアを中心にトレンディドラマが浸透したのが90年代に入った頃からです。一方、「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」や「料理の鉄人」など番組フォーマットの販売も、その後少しずつ増えていきました。

欧米では、「SASUKE」や「料理の鉄人」などの番組フォーマットは成功していますが、アニメ以外では番組そのものの参入は難しいのが現状です。しかし、それらのフォーマットのおかげで、日本がクレイジーで面白い番組を作るという認知は確実にされています。実際、春の「MIPTV」で、各局共同で開催した日本の最新番組フォーマットを世界のバイヤーに紹介するイベント「TREASURE BOX JAPAN」は、カンヌ映画祭の公式上映でも使う大きな会場が満員になりました。

その歴史の中で、映像コンテンツの国際見本市である「MIPCOM」・「MIPTV」に日本は初期から参加しており、40年ほどになります。

 

◆「MIPTV」、「MIPCOM」について
1963年(リヨンにて「MIPTV」の開催が初回)よりフランスで開催されている、世界最大規模の映像コンテンツの国際見本市。開催時期は年2回。毎年春に開催される見本市は「MIPTV」、秋は「MIPCOM」と呼ばれ、フランスのReed MIDEM(リード・ミデム)社が主催している。
〔詳細はこちら〕


 

 

 

日本が「Country of Honour」を通して世界に向けて発信したこと

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市井)今年は初めての「Country of Honour」となりましたが、これを機会にどのように活用しようと考えたのでしょうか。

渡辺)日本はモノ作りに命を懸けてきたので「SPIRIT OF IMAGINATION」という部分を強く伝えたい想いがありました。

今までは、主に子供向けのアニメやバラエティ番組のフォーマットが、日本コンテンツとして海外に受け入れられてきました。アジア市場にドラマも販売してきました。しかし日本には、さらに面白いドラマや大人向けのアニメもあります。これを知ってもらおうと、今回のコンセプト「SPIRIT OF IMAGINATION」を作るにあたり、「今の日本、これからの日本」を見せることに決めました。そこを今回は、積極的に出すことができ、いい反応が得られたと自負しています。

海外番販の現場の経験を踏まえ、「Country of Honour」の中身をクリエイティブに作っていきました。オープニングパーティは想定以上の集客で、外国の方々が盛り上がり、最後まで帰らなかったのが印象的でした。

 

OPENING PARTY

◆OPENING PARTY
4千人近くが来場。日本食の代表「SUSHI」や日本人のDJによるパーティは大きな反響があった。

 

 

JAPAN-MARKET-OVERVIEW

堀江)日本は海外展開の歴史が比較的長いこともあり、売り出すコンテンツのジャンルが豊富にありました。他国が「Country of Honour」を務めた際は、例えば「ドラマを打ち出す」などジャンルが限られる中、日本はドラマやバラエティ、アニメなどジャンルがいろいろあり、古いものも新しいものも、さらに技術も、と盛りだくさんでした。また、日本の文化を含め紹介出来たので、今までとは違ったものになったと思っています。

市井)私は「TREASURE BOX JAPAN」に初めて出席しましたが、それぞれの内容が面白く、皆さんの英語のプレゼンテーションも素晴らしかったと思います。

 

JAPAN-MARKET-OVERVIEW

◆JAPAN CONFERENCE
日本のコンテンツマーケット概要や、最新番組フォーマットを紹介する「TREASURE BOX JAPAN」など様々なプレゼンテーションが2日間にわたり行われ、延べ600人以上が参加。

 

MEDIA MASTERMIND KEYNOTE

◆MEDIA MASTERMIND KEYNOTE
ソニー株式会社 代表執行役 社長 兼 CEO 平井一夫氏による基調講演。アニメや映画などのコンテンツや「プレイステーションVR」といった自社製品を紹介しつつ、コンテンツを楽しませるために技術で人々を感動させる重要性も強調した。
講演の動画はこちら

 


堀江)「JAPAN PLAZA」の8K番組上映に大きな反響があったことは想定外で、800名以上に見ていただきました。映像コンテンツ業界がワクワクする技術として日本の8Kは認知されたと思います。新しいものを見たいという熱を感じました。

 

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◆JAPAN PLAZA
NHKがフランス・ルーブル美術館と共同で制作した、8K番組「ルーブル 永遠の美」ダイジェスト版(10分)を上映。
番組の詳細はこちら

 

「Country of Honour」をきっかけに、『これから』に繋げていく


宮澤)今年は500名も日本からの参加者がありました。去年の1.5倍もの人が来たことになります。しかもエグゼクティブが多く参加してくれました。

日本の番組制作者にとっては、国内で視聴率を稼ぐことがまず第一であり、会社全体においても、海外まで目を向けきれてない部分がまだまだありますが、今回の「Country of Honour」をきっかけに、海外に日本コンテンツを売り込む現場を、各社のエグゼクティブに体感してもらえたことは非常に意義のあることだったと思います。

また、海外マーケットに向けた仕事をしている者として、日本で番組を作っている制作者たちに、海外に向けた意識を持ってもらうことを課題に感じていました。今回のイベントが意識付けのきっかけとなれば、とても良かったと思います。

堀江)コンテンツビジネスはいきいきしていて、どんどん新しいものが出てくるので、次世代のスターを仕込んでいく必要性を感じました。日本のアニメ界ではこの人、ドラマ界ではこの人、というように才能のある人たちを、世界にプレゼンしていくことが重要だと思いました。

宮澤)自分の作ったコンテンツを世界の人に見てもらえることは、本能的には嬉しいはずです。なので、作っている本人が、世界のコンテンツ業界のメジャーリーグとも言える「MIPCOM」のような場所でそれを体感してもらうサイクルづくりが大切だと思っています。

市井)お客さん側から期待できること、ビジネスとしてつながることはありましたか?

宮澤)世界中でOTT(※2)の新しいチャンネルが出てきた良いタイミングだったと思います。実に、今回バイヤー登録した4,900人中の約3割がデジタル系のコンテンツ事業者だったと聞きました。コンテンツを集めて配信業者に売ろうとしているブローカーのような人、あるいは自身がプラットフォームを持っていて配信事業を始めた事業者などです。今回の「Country of Honour」をきっかけに、日本ブースへコンテンツを探しに来てくれた人もいました。

渡辺)「ドラマカンファレンス」では、配信や衛星波には、通常TVでは出来ない自由な描写に期待したいというクリエイティブ側の声もありました。発信形態により制作する内容が違うので、様々なニーズに応えることが可能だと思います。

 

支援事業を活用し、業界のさらなる飛躍を目指す

市井)2013年「MIPTV」はJ-LOP助成金の初期の案件であったことを覚えています。そして、4年目となる現在、今回の「MIPCOM」で補助金を活用する事業者が大幅に増えました。

宮澤)JLOP補助金を活用し、「MIPTV」・「MIPCOM」「ATF」「TIFFCOM」などに参加する地方TV局の出展が増えました。これは、JLOPの大きな成果だと思います。キー局でも同様ですが、現場に行って空気を感じるのは、全体の底上げに繋がる良い事ですので、これが続くといいなと思っています。

堀江)「MIPCOM」はプレゼン合戦です。あの場で勝負するため、良い広告枠をまとめて抑えるなどのサポートがあると、日本としてもっと勝負しやすくなると思います。

 

映像コンテンツの引力をもっと世界に感じてほしい

渡辺)今回は、日本の最先端が出せたと思っています。ソニー 平井社長の基調講演や8Kコンテンツ、4K HDR番組の上映などを通し、最新の技術も披露でき、技術とコンテンツを融合してアピールができました。

宮澤)新しい技術が新しいコンテンツを生んでいくことは間違いないと思います。

市井)最新技術がコンテンツを制作する側と早い段階から共有される場があるといいですね。

堀江)『顔の見える日本』でありたいとも思います。日本食など「JAPAN」は人を引き付ける力があるので、コンテンツでも同様に人を引き付ける力があることをもっとアピールしていきたいです。そのためには次世代のスターと、若い世代の熱が必要です。

宮澤)日本は、コンテンツ制作に関しては、国内と海外とで戦うフィールドが別々になっています。そこをシームレスにできる人を育てないといけませんね。

※1「番組フォーマット」
番組の企画コンセプトや制作ノウハウをパッケージ化したもの。これを販売することを一般的に「フォーマット販売」と言う。

※2「OTT」
「オーバー・ザ・トップ(over-the-top)」の略。インターネットによるコンテンツ配信のこと。

 


 
 

watanabe_profile

渡辺 圭史 KEIJI WATANABE
Country of Honour運営事務局 プロデューサー
一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)事務局次長
  • 1999~2000年

    文化庁芸術家在外派遣研修員(米国派遣:コロンビア大学大学院修了)

  • 2006年    

    日テレ アックスオン入社

  • 2008~2010年

    海外戦略担当部長(欧米への番組フォーマット販売など)

  • 2010~2012年

    企画戦略センターCP(海外共同番組制作など)

  • 2013~2015年

    営業開発部長(自治体や企業の広報・宣伝事業の企画・運営など)

  • 2015年4月~ 

    BEAJ出向
    2015年9月、日アセアンテレビ祭パブリック・イベント
    (マレーシア・クアラルンプール)をプロデュース

horie_profile

堀江 さゆみ Sayumi Horie
NHK 編成局 展開戦略推進部 部長
  • 1986年    

    NHK入局

  • 1986~1992年

    アナウンス室勤務

  • 1992~1993年

    英プロダクション Antelope Filmsにて派遣研修

  • 1993~1999年

    衛星放送局勤務(ディレクター)

  • 1999~2000年

    放送事業局プロデューサー(外部制作委託、購入番組)

  • 2000~2016年

    国際共同制作担当プロデューサー

  • 2016年    

    編成局展開戦略推進部部長

miyazawa_profile

宮澤 徹 Toru Miyazawa
株式会社フジテレビジョン 国際開発局次長兼事業開発部長
  • 1989年   

     フジテレビ入社

  • 1989~1993年

    編成局映画部

  • 1993~1994年

    米・ロサンゼルスの制作会社Outlaw Productionsに派遣

  • 1994~1997年

    編成局映画部

  • 1997~1999年

    事業局事業部

  • 1999~2002年

    編成局編成部

  • 2002~2003年

    フジテレビ、TBS、テレビ朝日の3社による番組配信企画会社
    「トレソーラ」に派遣

  • 2003~2010年

    映画事業局映画制作部

  • 2010~2012年

    編成制作局編成開発部企画担当部長

  • 2012~2014年

    コンテンツ事業局契約管理推進部長

  • 2014年~   

    国際開発局事業開発部長


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