VIPO

インタビュー

2016.12.07


コンテンツの制作現場に欠かせない権利・法律知識とは?弁護士・弁理士対談
12read

11月からスタートした「VIPOアカデミー/リーガル・エッセンシャルコース」は、コンテンツ業界人に必要不可決な法律の知識を学べる講座。今回は講師3名に、現場が持っておくべき法律的な視点や専門家への相談方法を、VIPO事務局長・市井がインタビューしました。

(以下、敬称略)

コンテンツを守るために知っておきたい、法律知識の重要性

クリエイターも法律を味方に

rogo市井)本日はコンテンツ業界にとって重要な、権利や契約といった法律的側面について、「VIPOアカデミー リーガル・エッセンシャルコース」で講師をされている弁護士・弁理士の先生方にお話を伺います。

石井)まず、コンテンツ業界の人に知っていただきたいことは、コンテンツ業界のビジネスは、他の業界よりも法律の果たす役割の重要性が高いということです。コンテンツ業界で作ったものは、そもそも知的財産権法がないと守られません。特に今は、ITで簡単にコピーできる時代。法律があってこそ初めて成り立つ業界ということもあり、その役割は大きいので、意識を高く持ってほしいと思っています。

またインターネットをはじめとする配信業者の増加や、次々に新しい制作手法が登場するなど変化が大きい業界でもあります。このような業界では、既存の業界慣習のようなものでは解決できない場面も増えていきます。新しいビジネスで、最後に物を言うのは法律です。

江森)例えば、デザイン会社と契約していたクリエイターが描いた絵の著作権をその会社に渡した。契約が終了した後に、その人が別の会社の依頼で作成した絵について、前の会社から著作権の侵害で訴えられたという事例があります。同じ人が描いているので似た題材を描いたり、全体として似た雰囲気になることがあるかもしれません。このようなトラブルにならないよう、クリエイター自身も渡した権利の中身を理解しておかないといけません。

また、日頃のクリエイティブ業務において、できた作品にはすぐ名前を書くことで、その作品の著作者であるという推定(著作権法14条)が及ぶようになります。このように最低限の知識があるだけでずいぶん違ってくると思います。

市井)若いクリエイターだと、契約を優先させて、気になったことを言えない人も多いと思います。心理は理解できますが、やはり自分の権利は自分で守らないといけませんね。VIPOでも、クリエイター向けにリーガルセミナーを企画してみるのも一案かもしれません。

 
 

転ばぬ先の杖として、専門家に相談する習慣をつけて

江森)分からない契約書にはサインしない。これは徹底してほしいです。よくある危険なパターンは、言われるままに名前を書いてしまうこと。サインしてしまってから、中身を読んでいませんでした、読んだけど理解していませんでしたということは、通用しません。読んで分からないことがあれば、一つずつ教えてもらってください。それでも分からなければ持って帰って、弁護士なり専門家に相談することが大切です。

また会社の中では、法務部や弁護士は、プロジェクトを進める際のブレーキ役と思われがちです。しかしリーガル知識があってこそリスクを回避でき、また思わぬ新たな発見があったりして、クリエイティブの可能性を高めることができます。発想転換をして、専門家をどんどん活用してほしいです。

角田)事が起こってから専門家に初めて相談するのではなく、小さな悩みや疑問でも事前に相談してもらえれば回避できることが多々あります。また、事業者が気づかぬ間に損失を被っている状況も見受けられます。我々も現場の人となるべく接して法律相談の敷居を低くしていきたいですね。

江森)信頼できる医者を探すように、弁護士も探していただきたいと思っています。

市井)VIPOではコンテンツ事業者を対象に、無料で弁護士と弁理士に相談できる会を毎週実施していますので、うまく利用してほしいです。<「VIPO無料法律相談」の詳細>

 
 

「法律相談」より「ビジネス相談」の感覚。 まずは気軽に声掛けを

VIOP石井)法律相談は、相談することがないと行ってはいけないということではなく、実はもっとカジュアルに考えてよいのです。まずは顔を合わせることが大切だと思っています。

小さな相談案件でも、何人かの弁護士に会って相談してみてください。普段から少しずつ弁護士を使っていれば、いきなり大きな案件で弁護士を使うよりハードルが低いはずです。またコンテンツに詳しい弁護士を正しく選んでもらうためにも、何人かに会うことが大切だと思います。

市井)石井先生、角田先生にご担当いただいている「VIPO無料法律相談」は、セカンドオピニオンのような使い方でも構いませんか?

石井)もちろんです。また「VIPO無料法律相談」に限らず、弁護士に相談していただければ、自分の専門外の案件などでも、相談される内容に応じて専門分野や金額面など含めて、マッチしそうな弁護士を紹介できる場合もあります。
 

 
 

法律相談だけでなく、一緒にブレインストーミングも

 

市井)専門家を探すための最初の一歩はどうしたらいいですか?

角田)企業勤めで顧問弁護士がいる人は別として、最近はインターネットで探す方も多いです。しかしここで難しいのは、適切な事務所の見分け方ですね。

江森)得意な分野や能力、キャラも人それぞれ。相性もあるので、ネットや事前情報だけで弁護士を選ばず、直接会って決めるのが良いと思います。「弁護士会」では取扱分野別で弁護士を検索できるので、ぜひ利用してほしいです。<弁護士検索はこちら>

石井)重要な案件であれば、2~3人の専門家と会うことをおすすめします。会ってみて、この人ならいいと思うなら、大抵は大丈夫だと思います。

江森)また相談される際は、今起きている具体的なトラブルの内容以外に、ビジネスの内容や業界の勢力図、会社の持つ大きなビジョンなどに関しても教えてほしいと思っています。トラブルをどう扱っていくか考える中で、そのような情報を得ることは有益です。

石井)そうですね。一緒にビジネスをしている気持ちで巻き込んでいただきたいと思っています。そうすることが、トラブルの事前回避につながります。また、新しいビジネスをしようというようなときは、早い段階から弁護士などを加えて検討することが有益です。自分たちで問題だと思っていたことが専門家の目からはたいしたことではなかったり、逆に簡単だと思っていたことが意外と難しかったりといったことはよくあります。早い段階から専門家の意見を取り入れながら進めれば効率的ですし、法的な意見以外でも、弁護士などの過去の経験などが役に立つような場合もあります。

江森)知財に関しても知識がないと、ビジネスは成り立ちません。新しいコンテンツを作るときは、「権利はどうするのか?」という部分を必ず考えてほしいです。

市井)法律相談というより、ビジネス相談の感覚ですね。

角田)特許事務所では、ブレインストーミングをよく実施します。アイデアがたくさんあるので、ここは特許が取れるなど助言をさせていただきます。最適な提案のためにも、特許出願前の段階からやらせていただくことが多いです。

商標も同じで、ビジネス展開していきたいコンテンツはどこで商標を出願するか、ここは著作権にするかなど戦略を一緒に考えれば効率もいい。知的コンサルとして考えてもらいたいと思っています。

石井)著作権を取り扱う弁護士も増えました。コンテンツ業界をサポートできる環境が、以前より整っていることは確かな事実です。法科大学でも平成18年から著作権が司法試験の選択科目になり、全体の1割の学生が勉強するようになったので、コンテンツ業界にとって前向きな流れができつつありますね。

 
 

リーガルに関する勘所が、コンテンツ制作の大きな武器に

市井)常に、法律的にこれはどうなのかな、と考えることが大切ですね。

角田)これは確認しないとマズイというような、”感覚”を身につけることは役に立ちます。自分で判断する知識よりも、専門家にどこを聞けばいいかが分かれば十分だと思います。

石井)「VIPOアカデミー リーガル・エッセンシャルコース」ではコンテンツ周りの法律基礎知識をカバーしています。みなさんの仕事に直接リンクすることも多く、熱心に聞いてくれている印象があります。少人数なので質問もしやすいと思います。

角田)コンテンツ業界の人は、契約面など法律の話になると苦手意識のある人が多い様です。このコースで法律面を知り、少しでも役立てていただければいいですね。

江森)契約を結ぶときに気を付ける箇所や、どんな法律があるかを知り、法律家に聞く勘どころを養うということですね。法技術的なノウハウよりは、法律の視点からみなさんが今までしてきた、または今していることを再構築してもらう、リーガル的バックアップのお手伝いをしたいと思っています。

市井)コース用に揃えていただいた資料は、その場だけでなく後々実務に使えると思います。

 
 

第2期のリーガルコースの見どころ

 

市井)来年1月からは、「リーガル・エッセンシャルコース第二期」を開講します。

江森)受講者の知りたい内容に、できるだけ応えていきたいと思っています。

角田)最新情報に基づいてわかりやすく、知っておくと有利な知識をお伝えしたいですね。

石井)次につながる気づきのためにも、ケーススタディや議論を増やしていきたいです。第一期を踏まえ、ブラッシュアップしていく予定です。

「リーガル・エッセンシャルコース 第二期」プログラムはこちら
2017年1月25日(水)~3月8日(水)、全6回開催予定
第1回 契約基礎、著作権法基礎
第2回 コンテンツビジネスの知的財産権
第3回 コンテンツ制作と権利処理
第4回 コンテンツの利用、流通の法律問題
第5回 コンテンツビジネスの契約、契約書
第6回 業界別の知的財産権、契約・契約書


 
 

ishii_profile

石井 邦尚 Kunihisa Ishii
弁護士、カクイ法律事務所 代表
企業法務を中心に取り扱っており、中でもIT関連の法務、コンテンツビジネス関連の法務に力を入れている。
  • 1999年弁護士登録(第二東京)
  • 2003年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒
  • 2004年カクイ法律事務所開設
  • 2010年~2013年
    大宮法科大学院非常勤講師
    (担当科目:IT法、アメリカ法特殊問題)
emori_profile

江森 史麻子 Shimako Emori
弁護士・弁理士、大洋綜合法律事務所 代表
著作権を中心とした知的財産権分野を専門とし、ライセンス契約を中心とする企業法務のほか、一般 民事・刑事事件も扱う。著作権法学会会員、国際著作権法学会(ALAI JAPAN)会員
  • 2002年弁護士登録(第一東京弁護士会)
  • 2003年江森総合法律事務所開設
  • 2004年弁理士登録
  • 2009年
    大洋綜合法律事務所開設
    駒澤大学法科大学院准教授
    (現職教授、知的財産法)
kakuta_profile

角田 成夫 Shigeo Kakuta
弁理士、特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
工業系の特許のみならず、コンテンツ分野の商標等も数多く取り扱う。現在、カクイ法律事務所と業務提携し、知的財産の発掘から活用まで企業の知財戦略を幅広くサポート。
  • 2010年弁理士登録
  • 2014年特許業務法人アテンダ国際特許事務所開設

新着のインタビュー記事はメールニュースでご案内しています。
よろしければ、こちらよりご登録ください。

メールニュース登録


インタビューTOP