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2024.03.25 事業報告
「全国映画資料アーカイブサミット2024」実施報告

 国立映画アーカイブ「令和5年度アーカイブ中核拠点形成モデル事業」の一環として、2024年1月26日(金)にオンラインにて「全国映画資料アーカイブサミット2024」を開催いたしました。
 
5回目の開催となる今回のサミットでは、望ましい映画資料アーカイブの構築に向けて議論を深めるべく、地域連携をテーマにしたシンポジウム、映画館にまつわる資料アーカイブや映画分野の展覧会キュレーションに関する発表など多様なプログラムを行い、今回も多くの方にご参加いただきました。
 

開催概要

日 時 2024年1月26日(金)10:30〜17:00
場 所 Zoomを用いたライブ配信(主会場VIPO会議室R)
参加者 193名
参加費 無料
構 成 第1部報告、第2部報告、第3部報告、第4部セミナー、第5部セミナー、第6部シンポジウム

 

プログラム

主催者挨拶(10:30~10:40)
 
第1部報告データベース「映画資料所在地情報検索システム(JFROL)」の新規連携(10:40~10:50)
登壇者
JFROLと調布市立図書館の映画資料データベースの連携
事務局/佐藤 友則
 
事務局からJFROLの簡単な開発経緯の説明の後に、令和5年度事業で新規にデータベース連携する調布市立図書館の施設紹介、所蔵資料概要、連携データベースの概要、連携に際しての工夫について報告いたしました。
 
第2部報告「映画資料をめぐる国立映画アーカイブの新たな取り組み」(10:50~11:20)
登壇者
1.重複する映画資料の頒布事業
宮本 法明(国立映画アーカイブ研究員)
 
2.ウェブサイト「映画遺産―国立映画アーカイブ映画資料ポータル―」の開設
岡田 秀則(国立映画アーカイブ主任研究員)
 
国立映画アーカイブで2023年度より開始した2つの取り組みについて発表いたしました。最初に宮本が全国の映画資料館を対象にした重複する映画資料の頒布事業について、その概要、現在の対象資料、実績について発表いたしました。次に、岡田が新たな映画資料ポータルサイト「映画遺産―国立映画アーカイブ映画資料ポータル―」について、国立アートリサーチセンターの協力により国立情報学研究所と共同制作した同サイトの概要、現時点での内容説明や今後の展開について発表いたしました。
 
第3部報告「映画資料展―2023年現地報告」(11:30~12:00)
■構成・登壇者
1.甲斐荘楠音の全貌、絵画、演劇、映画を越境する個性(会場:京都国立近代美術館、東京ステーションギャラリー)
登壇者:山口 記弘氏(東映株式会社・経営戦略部フェロー)
 

2.娯楽映画の黄金時代・日欧映画交流(会場:インスティトゥト・セルバンテス東京)
登壇者:ダニエル・アギラル氏(映画史研究家、翻訳家)
 
3.「日本アニメーションの父」政岡憲三とアニメーションの現在(会場:帝京大学総合博物館)
登壇者:堀越 峰之氏(学芸員)
 
コロナ禍をようやく脱した2023年に盛んに開催された映画資料展の中から、時代劇衣裳にも本格的に関わった日本画家の展覧会、日本の特撮映画の欧州版ポスターや欧州の日本版ポスターの展示、日本の古典作品を主とし現在の作品へとつながるアニメーション史の展覧会について、各展示関係者からそれぞれの資料展の開催経緯や内容、映画資料を魅力的に見せる工夫、問題点等を報告していただきました。
 
 
第4部セミナー「映画資料と著作権~文化的活用とデジタルアーカイブをめぐって」(13:00~14:15)
講師:五常総合法律事務所 パートナー弁護士 数藤 雅彦氏
 
ポスターやスチル写真などの宣伝材料、シナリオ、映画美術などの製作関連資料、映画人・映画団体の資料など幅広い内容を含む映画資料の文化的活用を考える際に留意しなければならない著作権等の法律について、映画関係の事例にも詳しい数藤弁護士に講義していただきました。各資料別の活用例における、著作権、所有権、肖像権・パブリシティ権等の権利処理、また最近の著作権法改正の動向について解説していただきました。最後に視聴者からの質疑応答も実施いたしました。
 
第5部セミナー「映画資料最前線―映画館文化発掘の試み」(14:30~15:20)
■構成・登壇者
1.かつてそこに映画館があった-「消えた映画館の記憶」について
 澤田 佳佑氏(サイト「消えた映画館の記憶」管理人)
 
2.鳥取県の映画文化研究-映画資料が語る地方の映画文化史
 佐々木 友輔氏(鳥取大学地域学部准教授)、杵島 和泉氏(鳥取大学地域学部)
 
映画作品にまつわる資料に限らず、近年盛んな映画館文化の掘り起こしに寄与する資料への理解を深める事例として、2つの活動について発表していただきました。まずウェブサイト「消えた映画館の記憶」管理人の澤田氏には、失われた全国各地の映画館の概況から、文献資料及び現地調査の方法と実績、消えた映画館の記憶を残す意義などについてお話しいただきました。次に、鳥取大学をベースに鳥取県の映画文化リサーチプロジェクト「見る場所を見る」を実施されてきた佐々木氏と杵島氏に、地方における資料調査の課題とそれを解消するための「イラストレーション・ドキュメンタリー」という方法、展示の実績や今後の展望についてお話しいただきました。最後に視聴者からの質疑応答も実施いたしました。
 
第6部シンポジウム「映画資料アーカイブと地域連携―その可能性を探る」(15:30~16:45)
■登壇者
パネリスト :
小津安二郎松阪記念館│岩岡 太郎氏(研究員)
茅ヶ崎ゆかりの人物館│加藤 厚子氏(運営アドバイザー)
羽島市映画資料館│近藤 良一氏(相談役)
神戸映画資料館│田中 晋平氏(研究員)
モデレーター:
国立映画アーカイブ│岡田 秀則(主任研究員)
 
今回は「地域連携」をテーマにシンポジウムを実施いたしました。しばしば豊かな地域性を持つ映画資料のアーカイブにとって、それぞれの地域社会との連携は欠かすことのできない重要な事項です。地元コミュニティや地域の企業、研究家、コレクター、映画ファンなどとのつながりは、映画資料アーカイブの諸活動を促し、未来の有機的運営の促進につながります。
まず全国各地の映画資料館の登壇者にそれぞれの館の取り組みや課題について発表いただきました。各館の発表の概要は次の通りです。
 
①小津安二郎松阪記念館…取り組み=松阪市で青春期を過ごした小津安二郎関連の資料展示や上映会、ワークショップなど/課題=学校や小津に縁のある県内他市との連携など。
②茅ヶ崎ゆかりの人物館…取り組み=館と市民が協働した地域文化の調査、2023年の企画展の紹介/課題=地域連携の仕組み作り、関係性の構築、収集・保存など。
③羽島市映画資料館…取り組み=展示を通じた地元の興業社・新聞社・コレクター・映像作家・映画看板師等との連携など。
④神戸映画資料館…取り組み=市民参加で神戸の映画館の記録を残す「神戸映画館マップ」の活動及び関連イベントの紹介など。
その後の自由討論のパートでは、個人で構築した人間関係の継承の課題や現物資料に留まらない聞き取り調査の取り組みについてなどの話題、また視聴者からの質問パートでは各館の取り組みによる新たな映画ファンの獲得についてなどの話題が展開いたしました。
 
令和5年度事業説明(16:45~17:00)
担当:事務局/佐藤 友則
1.調査報告(対象施設:名古屋鉄道、名古屋市博物館、名古屋タイムズアーカイブス委員会、羽島市映画資料館、
 亀山市歴史博物館、小津安二郎松阪記念館)
2.調査研究の実証展示告知/2024年2月10日~18日 調布市文化会館たづくり 北ギャラリーにて
3.映画資料のデジタルアーカイブ化実施報告(協力:北九州市立松永文庫、木下惠介記念館)
4.映画資料所在地情報検索システム(JFROL)の一般公開と新規連携の予定について
5.「全国映画資料アーカイブサミット2024」の実施
 

お問い合わせ先

特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
令和5年度アーカイブ中核拠点形成モデル事業事務局
E-mail: nonfilm.archive@vipo.or.jp