VIPO

インタビュー

2017.09.12


日本コンテンツのグローバル展開におけるパートナー、 海外IPエージェント4社が語る日本企業に期待すること
VIPO内J-LOP4補助金事務局では、「コンテンツ東京2017」(6/29・30)において、海外IPエージェント4社を招聘し「海外エージェントビジネスマッチング」を実施しました。その4社の責任者に、VIPO専務理事・事務局長の市井三衛が、各国マーケットの状況や、日本のコンテンツホルダーの方々に期待することなどについてインタビューを実施しました。

海外エージェント4社
CraneKahn LLC Chairman and CEO Alfred Kahn氏(アメリカ)
San-Byte Creative Co., Ltd. General Manager 如意 宗司氏(台湾)
Dream Express [DEX] Co., Ltd  Director  Panida Dheva-aksorn氏(タイ)
コピーライツアジア株式会社 代表取締役社長 デイビド・バクリ氏(日本)
(順不同)

 

CraneKahn LLC(アメリカ)
Chairman and CEO Alfred Kahn氏(写真右)


CraneKahn社は、4キッズエンターテインメント社の創業者でありCEOだったAlfred Kahn氏とジリアン・クラン氏(現社長)が設立。子ども向けのエンターテインメントとライセンス事業をグローバルに展開、特にアジアの人気アニメーションを積極的に取り扱い、中でも日本の名作を欧米においてブレイクさせることに注力している。CEOであるAlfred R. Kahn氏は、ライセンス業界において30年以上の経験があり、これまでポケモンやキャベツ畑人形、ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ、遊戯王などの有名ブランドを見出し紹介。LIMA(The International Licensing Industry Merchandisers’ Association)とキッズスクリーンの殿堂メンバーでもある。

プレゼンテーション資料

CraneKahn社について

日本のIPは、ポケモンをはじめとして、ニンテンドーマリオブラザーズ、遊戯王などを扱ってきました。日本とのビジネスは30年近くになりますが、今回、日本のマーケットの変化をとても感じました。少子化の影響により、キッズ向けの番組が減り、替りに大人向けのコンテンツが増えてきています。私たちはキッズ向けのコンテンツをメインにしていますが、日本の変化にはとても注目しています。

日本のIPホルダー企業に期待すること

現在は、子ども向けの“既存”の番組をメキシコなどアジア以外の地域に向けてローカライズしています。今後は、最初から世界展開すること前提に、子ども向けのコンテンツを一緒に開発したいと考えています。
この業界の競争はますます激しくなっています。共同することによってお互いが強くなっていきます。日本だけではなく、世界でウケるものをオリジナルで作ることが必要だと考えています。

子どもは世界中どこに行っても子どもです。例えば茶道のような日本独自のものではなく、文化的にニュートラルなもの、つまり、世界中の子どもにもウケるようなキャラクターやストーリー、遊びのパターンなどのコンテンツを共同制作していきたいです。制作過程では、子どもは何に夢中になるのか? どんなストーリーを好むのか? どんなことに興味を持っているのか? お互いにいろいろなアイデアを出し合っていくのが理想ですね。

中国や韓国とはすでにプロジェクトを進めています。特に中国はオープンで、私たちは制作の早い段階から関わっています。例えば、中国アニメをアメリカ向けにローカライズした番組は、アメリカの子どもに大人気です。タイトルや音楽もアメリカ向けに変えています。

日本企業はビジネスにおける決定プロセスが私たちとは違いますから、いきなり制作のはじめから関わるのではなく、まずは完成前に見せてもらってコメントを反映させてもらうとか、共同制作は段階的に進めることが必要でしょうね。他国の成功事例をみてもらえれば理解してくれると思いますし、もし1社が成功すれば後に続いてくれるのではないかと思っています。

日本は、アニメやゲーム制作において素晴らしい歴史があります。それに、1つのテーマからさまざまストーリーを展開することにとても長けています。恐らく1つのテーマから500エピソードでも生み出せるのではないでしょうか? アメリカなら、きっと2シーズンで終わってしまいますよ。
日本のクリエイティビティにはとても期待しています。

San-Byte Creative Co., Ltd.(台湾)
General Manager 如意 宗司氏(写真右)

サンバイトクリエイティブ社は、台湾、香港、中国の中国語圏およびタイを中心に、ブランドライセンス、展示会・イベントの開催、商品の企画製造と輸出入、映像ライセンスを、国際的かつ創造的なソリューションを用いて、国境を越えて提供し、独自の価値を高めるための適切なアドバイスやサービスも提供している。日本人の経営により、アジアに文化のネットワークを創り出すことをめざしている。

San-Byte Creative公式サイト
プレゼンテーション資料

San-Byte Creativeについて

私は日本人ですが、2008年から台湾で現在の会社を始めています。それ以前からアジアで30年以上この業界にいます。
ランセンスのビジネスには2通りあります。1)商品にライセンス(商品化)する場合と、2)企業宣伝やタイアップ、キャンペーン等にライセンス(プロモーション化)する場合です。

商品化ライセンスが主流だと思われがちですが、最近は、難しく、企業のプロモーションから食い込んでいく方法が主流になってきています。なぜなら中企業が主力の商品マーケットが伸びていないからです。業種によって大企業は伸びていますから、大企業のプロモーションに使ってもらって知名度を上げて、それから商品化する、という流れが増えてきています。これ以外に最近はゲームなどのコンテンツへのライセンスもあります。現地で知名度が低いIPの場合は、LINEスタンプを作るとか、Facebookのフォロワーを増やしていくとか、知名度を上げるなどの努力が必要です。企業にとって知名度が低いIPを使うメリットは無いからです。

しかし何よりも重要なのは、既に日本である程度の知名度があることです。日本で成功していれば声がかかる可能性は高いです。日本で成功していないIPは、アジア展開において9割方は成功しません。特に台湾では日本のマーケットをとにかくよく見ています。台湾にとって日本はとても近いんです。

台湾マーケットの状況

台湾は少子化の影響でキッズ向けマーケットは縮小し、大人のマーケットが広がってきています。それは、景気が良くなっているわけではなく、かつて日本文化の洗礼を受けた世代が大人になっているということです。パワーがあります。それは東アジア諸国も全体的に同じような状況だと思います。

台湾では、日本のIPがとにかく一番人気があります。米国やヨーロッパに比較してもです。バタくさいものに対する拒否反応があるのも少し感じています。香港の方が欧米のIPを受け入れる余地があるように思います。

日本のIPホルダー企業に期待すること

ライセンサーには、デザインなどのアプルーバルのハードルを少し緩めて欲しいと思う時があります。そうでないと海外ではなかなか難しいところがあります。
日本ではライセンサーの立場が上ですが、台湾ではお金を払う人が王様です。商習慣が違うのです。

ただ、他の国の若い世代は、日本以上にこなれている感じがしますね。こちらの事情も分かった上でビジネスをしている感じがします。ライセンサーとライセンシーの間で調整を行うのが私たちの仕事ですが、マーケットを知っていただければ、更に効率よく、ともにマーケットを開拓してゆけると思います。

Dream Express [DEX] Co., Ltd(タイ)
Director Panida Dheva-aksorn氏(写真右)

Dream Express社(以下DEX社)は、タイのバンコクを拠点に、エンターテインメントやメディア、コミュニケーション、ブランディングにフォーカスしたライセンス業界におけるアジアのリーディングカンパニー。創造性とブランディングの見識を持ったプロのライセンシングチームが、子供や家族向けコンテンツのディストリビューションから、放送、ライセンシングまでを幅広く取り扱っている。DEX社のライブラリーには、日本のキャラクターとしては「ガンダム」「仮面ライダー」「ウルトラマン」「ワンピース」「ラブライブ!」「ソードアート・オンライン」等を保有。DEX社は、コンテンツ、メディア、マーケティング、ディストリビューション、ライセンシング、デジタル、リテールなど全方位のマーケットへのアプローチを心がけ、エンターテインメントとブランドの発展、収益化をめざしている。

Dream Express [DEX]公式サイト
プレゼンテーション資料

Dream Express [DEX]ついて

私たちは日本のキャラクターから始めた会社です。基本的に1つのIPのすべてのエリアの権利を取り扱っています。例えば、仮面ライダーであれば、キャラクターIPとアニメーションのIPも取り扱っています。日本では、1つのIPを別々の会社が取り扱うことが多いようですが、タイではマーケットのスケールも違いますし、他社は必ずしもそうではないですが、すべてを扱うのが私たちの強みです。

私たちの創業者は、もともとタイのバンダイで10年近く働いていて、おもちゃ業界に通じています。またライセンスの会社からの委託経験などもあるのでグッズにも通じています。さまざまな経験があるのでIPビジネスの全体像を描くことができます。

私たちが一番大切にしていることは、ひとつひとつのIPを大事にすることです。それが成功を導いてくれます。

現在社員は80人くらいですが、この10年で、さまざまなエリアで実績を積んで実力を証明してきたので、権利をもらうのはそれほど難しいことではなくなりました。

ビジネスのスタートは、ゲームや子どもが遊んで楽しめるようなグッズにできる“良いコンテンツ”を探すことです。
どのようなエンターテイメントコンテンツがタイのマーケットに適するか? ローカライズすべきかどうか? ユーザーがそのキャラクターに会うまでのタイムラインはどうなっているか? それをどう利用して、どのように使っていくのか? 何を付け加えるのか? などを分析して、TV、インターネットなどさまざまなメディアで展開し、イベントでは実際にキャラクターを体験してもらいます。

ビジネスの展開の仕方としては、1つのアニメを、ほかのエリア…、例えばゲーム、スポーツ、食品、旅行などに広げていきます。また、モバイルアプリで展開したり、将来的にはキャラクターレストランを開店したりすることもあるでしょう。そのためには、すべてのステージで試作していくことが大切です。

日本のIPホルダー企業に期待すること

今後は、もっとデジタルメディアに広げたいと思っていますが、残念ながら海賊版ダウンロードの問題があります。信頼していただけるよう取り組んでいきたいと思っています。

日本はヒーローキャラクターに対する規制が厳格ですが、ローカライズするときには、もう少し緩めて欲しいです。例えば、仮面ライダーでは、タイ版のテーマソングをつくりました。現地で人気のコメディアンとのコラボレーションもしています。そのため仮面ライダーは今、タイの子供たちに大人気のキャラクターに成長しています。今後もこのような成功事例を日本のコンテンツで生み出していきたいと願っています。

コピーライツアジア株式会社(日本)
代表取締役社長 デイビド・バクリ氏(写真右)

コピーライツアジアは、1956年の設立以来、「チャーリー・チャップリン」や「パディントン ベア」など主に海外の作家やアーティストの作品を扱う、国際的なライセンスエージェント。設立当初より日本におけるライセンスエージェントのパイオニアとして、知的財産権の利用に関する専門的な知識と国内外のネットワークを駆使し、作家、アーティスト、キャラクター、美術品、ブランドなどに関わる権利を管理し、商品化、プロモーションライセンス、イベント、流通開拓まで幅広くライセンス活動を行っている。その活動領域は日本国内にとどまらず、米国キングフィーチャーズや英国コピーライツグループ仏国ヴィヴェンディとともに国際的なネットワークを駆使したビジネスを展開している。

コピーライツアジア公式サイト
プレゼンテーション資料

コピーライツアジアについて

コピーライツアジアは1956年の創業です。日本のライセンス業界では一番古い会社だと思います。
私自身は1983年からIP業界にいるのですが、コピーライツアジアの出発点は、1949年に創業者がニュージーランドで始めた貿易会社です。日本や東南アジアと貿易をするようになり、やがてIP業界に移り、1956年にコピーライツアジアの前身であるケンリック極東を設立しました。当時は、東京オリンピックの商品化、60年代にはワーナーブラザースやビートルズの商品化などを行っていました。チャップリンとの付き合いは50年以上にも及びますし、パディントン ベアは1975年から扱っています。

当社のビジネスは、日本IPの海外展開が15%で、香港、台湾が多いですね。それから、韓国、イギリス、フランス少々、アメリカなどです。海外IPの日本展開が残りの85%です。

取扱商品やエリアについて

最近は、IPのリバイタライゼーションやコラボレーション、商品とのミックスが多いですね。ファッションとのミックスなども行っています。代表的な例としては、「パディントン ベア× Shinzi Katoh」です。IPオーナーに許可をとって既存のIPを自分のスタイルで描き直しているのですが、フランスでとても人気です。

日本の特徴は、店舗がオリジナル商品を持ちたいと考えているところだと思います。例えば今は、オリジナルTシャツの展開が流行っています。各店舗が独占的なものを欲しがるので、さまざまなアプローチが必要です。

日本企業に期待すること

市場に向けて、良い戦略やプランを一緒に考えて、一緒にやっていけるパートナーが必要です。自分のアイデアだけを実現しようとする人と組んでビジネスをするのは難しいですね。

この30年間日本のIP業界を見ていますが、とても厳しくなっていると感じています。最近の変化としては「不景気」「コストアップ」「大手ディズニーとサンリオとの競争」「店舗の独占」などが挙げられます。「コストアップ」ですが、今ロイヤルティは消費税よりも安い状況にあります。

「店舗の独占」を説明しますと、昔は、ライセンシーは良いリテイラーを探せば良かったんです。いろいろなメーカーが一つの店舗で売っていたからです。でも今は、成功するには「売り場」を探す必要があります。「売り場」がないとモノが売れないからです。売り場はどうするか? タイアップしてデパートにスペースを借りるかなど、ライセンシーがAtoZ、すべての戦略を考えなければなりません。今は、「ライセンシー=リテイラー」なんです。売り場を作る必要があるのです。その点では、英国の老舗高級百貨店ハロッズが、先ほどお話した「パディントン ベア× Shinzi Katoh」とコラボレーションしたのですが、これは売り場を巻き込んで展開した成功事例のひとつですね。

日本の方には、“一緒になって”戦略を立て、“一緒になって”実現してくれるようなパートナーとなってくれることを期待しています。


新着のインタビュー記事はメールニュースでご案内しています。
よろしければ、こちらよりご登録ください。

メールニュース登録


インタビューTOP