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インタビュー

2018.09.18


明日から取り入れる「働き方改革〈2〉」―― ファザーリング・ジャパンが推進する「イクボス」編(VIPOアカデミーセミナー再構成)
>>明日から取り入れる「働き方改革〈1〉」―― DeNAが取り組む 「健康経営」編はこちら
VIPOアカデミー「コンテンツ業界が知っておきたい『健康経営』と『イクボス』働き方改革セミナー」では、私たちが取り組むべき経営戦略としての働き方改革の取り組みを紹介しました。今回は、株式会社ディー・エヌ・エー CHO(Chief Health Officer:最高健康責任者)室の平井孝幸さん、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表の安藤哲也さんお迎えして、それぞれの取り組みから実践事例などお話をしていただきました。「健康経営」編と「イクボス」編に分けて、再構成してお届けします。
(以下、敬称略)

「イクボス」の「イク」は、部下、組織、自分の老後、そして社会を育てるの「育」

上司の言動で職場がいきいきと動き始める

「イクボス」誕生の背景にあるもの

―― 「イクボス」の定義とは?

「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考えて、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果も出しつつ、自らも仕事と生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指しています。

4年前に始めたイクボス企業同盟には、今では191社が加盟しています。当時は女性活躍とかダイバーシティに取り組んでいる企業の加盟が多かったのですが、最近は、飲食や物流など、人手不足のところがどんどん入ってきています。というのは、学生が働きやすい企業に行きたいと思っていて、イクボス同盟に入っているんですか? とよく面接で聞かれるからだそうです。

―― ご自身が「イクボス」に目覚めたのは?

私は昭和37年生まれで、専業主婦全盛時代の家庭で育ちました。プライベートでは3人子供がいます。核家族の共働きだったので、私が子供を保育園に預けに行っていました。

2人目が産まれたあと、妻が育休を取りました。妻は職場復帰したのですが、1人目の子供の風邪で会社を4日休んだ直後、2人目が病気でまた4日会社を休み……、月に8日間休みました。その頃は、「女性活躍」という概念が全くない時代だったので、妻は毎回こう言われていたそうです。「やっぱり子供を産んだ人って戦力にならないよね」と。そして忸怩たる思いで家に帰ってきた妻の話をよく聞いていました。 

―― そのコメントは今ではアウトですね。

アウトです。しかし、当時私は「イクメン」ではなかったので、「じゃあ僕が育休を取るよ」ということも言えずに、朝、保育園に連れて行くことでごまかしていたんですね。

その後、だんだん妻が追い詰められていき、会社を辞めてしまいました。また家庭でも夫婦喧嘩が絶えなくなり、最後は娘に泣かれてしまいました。これではいけないと思って、それからは朝だけではなくて、週に2日くらいは保育園のお迎えにも行って家族で夕飯を食べて、子どもに絵本を読むような生活がしたいと思って、働き方を変えました。

―― ご自身の「働き方改革」が始まったのですね。

その頃は、リーダーや部長をしていて本当に忙しかったです。でも、それが今のイクボス活動につながっていると思います

2016年には副業でNPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げました。最初は厚生労働省イクメンプロジェクトで「イクメン」の支援をしていましたが、2013年頃から第2次安倍内閣が「女性活躍」を唱え始めて法律もできて、企業も本気にならなければならないモードになったと思います。当時は、ヨーロッパの男性の育児参加の研究もしました。

―― 安藤さんが行った改革は?

企業で管理職をしていたときにチームの有休消化率を100%にしました。ヨーロッパの企業文化にならい、年初に部下から20日間の休暇計画を出してもらいました。チームのみんなは驚いていましたが、「みんなの持っている権利をしっかり使って、ちゃんと業績を上げたらかっこいい」と言い続けました。その結果、みんながきちんと休めるような協力体制ができました。

ペット休暇も作りました。ある朝、部下が体調不良で休みたいと連絡してきたので休ませました。翌日も休むかと思っていたら、次の日元気に出社してきたので「もうよくなったの?」と聞いたところ、「すみません。実は昨日、犬の調子が悪かったんです」と。私はそれを聞いて、ひとり暮らしで犬を飼ってるのってシングルマザーと同じだと思いました。どうして人間の子は許されて、犬はダメなのかと思って。

―― 批判はなかったですか?

「今日からペット休暇認めます」という制度を作ったわけではありません。有休の理由としてペットの病気もOKということにしたのです。そうしたら翌週、ペットを飼っている3人くらいに休まれてしまいましたけどね(笑)。今は独身でも多くの人がペットを飼っています。僕も猫を飼っていたので、ペットは家族だと思っています。「ペットが病気で休んだ分は、取り戻して結果を出すんだよ」と常に言っていました。

私はスタートアップのヘッドハンティングで呼ばれていたので自信はありましたが、1人では無理なんです。私はSEでもエンジニアでもないので、みんなに頑張ってもらわないといけません。それなのに、「長時間働け」とか、「休みを取るな」とは言いたくなかったのです。みんなにしっかり休んで、しっかり働いて、しっかり稼いでほしいと思っていました。「犠牲者を出すオウンゴールではなく、ファインプレーでこのゲームに勝とう」と毎日のように言い続けて理解してもらいました。

 

 

なぜ「イクボス」による働き方改革が必要なのか

―― どのような危機感がありましたか?

男性の育児参加を進めた国が出生率を伸ばして、女性の経営者を増やすというエビデンスを知っていたので、「もっと日本の男性が家のことをできるようにしていきましょう」と言い続けました。男性の長時間労働がデフォルトになっているような働き方を、日本も変えていかないと「女性活躍」どころか子供の数も増えなくなります。みんなで子育てしづらい社会にしてしまった結果、少子化になり、コンテンツ業界も見る人・買う人が少なくなってきているのではないかと感じます。

だから「女性活躍」を進めたいのなら、育児に参加する男性「イクメン」を増やすことと、それを認める上司「イクボス」をセットで進める必要があります。ですので今、厚労省でイクメン・イクボスの事業をやらせていただいています。

これは国策で皆さんの税金を使ってやっていることです。僕は12年前に気がつきましたが、ようやく国もそこに気がついて、4年前に動きはじめました。

―― 育児だけでなく、介護も大きな問題ですね。

東京オリンピックの5年後くらいに団塊の世代が後期高齢者に入り、ここからは大介護時代と言われています。この時に団塊ジュニアの子供たちが介護をしなければなりません。今、40代後半くらいの人が、55歳くらいになったころです。その頃は、企業で部長や工場長など重要なポストにいる人たちが多いと思いますが、その人たちが介護をやらなくてはならないのです。

認知症患者が700万人、5人に1人。すでに育児と介護のダブルケアをしている人は25万人。ダブルケアは、晩婚、晩産化のツケです。これからは、晩産で子供が小さいのに親が倒れて、育児と介護がダブルできてしまう人が相当増えると言われています。

今、待機児童は4万人ですが、待機老人は40万人です。特別養護老人ホームもいっぱいですから、結局自宅で介護をすることになります。大変な大介護離職時代がやってくると言われています。

―― 数字で現実を見ると?

国策として少子化対策、子育て支援をしていますが、それが全部空振りに終わると2060年の日本将来推計人口はひどいことになってしまいます。これは皆さんの税金で買った国立社会保障・人口問題研究所のスーパーコンピューターが弾きだした数字です。

どうですか皆さん、2060年の年齢はいくつですか? 自分の年齢に42を足してみてください。

これを見て、ヨーロッパみたいに男性も育児参加をしなければいけないと思いました。こんな世の中だからこそ、今、本当に働き方を変えて女性が活躍できる社会を作らないとダメだと思います。あまり脅かすつもりはないんですが、これが近未来の現実です。

―― 健康寿命も延びていますね。

さらに今は、「人生100年時代」と言われています。昔はだいたい人生は70年、それが今や80年、さらに今後は100年時代となって、「マルチステージ」を生きていかないといけない状況になりました。

誰もが自分の生き方を見直して、本業以外のことを始める必要が出てきます。私たちはいま人口問題のような大きな構造的変化ともに、一人ひとりの生き直しの問題に直面しているのです。

―― 定年後のことも考える必要がありますね。

若い人だけでなく、これは50代でも必要になってくる問題です。働き方改革の先にあるのは実は生き方改革です。生き方改革=ワークライフバランスが目的です。働き方改革が目的じゃありません。

定年後のことは定年になってから考えるのではなくて、現役時代から一人ひとり考えたほうがいい。それを現役の時代から作るために、50代の方、まさにボス世代の人も「自身のことも含めて、管理職のダイバーシティのマネジメントができるようになりましょう」と言っているわけです。

 

 

多様性を受容できるマネジメントへ

―― 過労死は日本独特ですね。

休みが取れないことも、日本独特です。日本の有休取得率はフランスの1/4しかありません。なぜ、日本人が休むことに罪悪感をもつメンタリティができたのか? 原因の一つは、小学校の皆勤賞にあると私は思っています。世界の学校で皆勤賞があるのは日本くらいでしょう。6年間休まなかったら表彰されたり、ラジオ体操に全部出席すると何か貰えたりしますよね。「休まないことが偉い」ということを私たちは小さい頃からずっと教育されているのです。

ですから、昔、皆勤賞とった人が管理職になると休みづらい職場を作ってしまったりすることがある。休まない人が評価してしまうからです。私は新入社員たちにはいつも「配属先の上司が皆勤賞保持者か調べた方がいいよ」と言っています。

―― 長時間労働も評価されています。

長時間働いている人たちにも言い分があります。職員、社員の数が増えないまま仕事が増えて、業務がどんどん属人化してしまっているのです。自分がいないと仕事が回らない、だから休めない、帰れなくなってしまう。半年くらいでだんだん健康と家庭が破壊されていくパターンをよく見ます。

これからは「Work Hard」より「Work Smart」が求められると言われています。短い時間で高い価値を生み、個人でなくチームで生産性を上げていく健康的な働き方をしていくことが問われているのです。

―― 年功序列も無くなりつつありますね。

かつての企業の多くはピラミッド型の組織、雇用形態でしたね。一括採用で同期の中でトーナメント戦、勝ち抜いた人が上に上がっていく年功序列型で、主に男性、正社員、終身雇用で時間や場所に”制約のない社員”で構成されていました。でもここ15年で、このピラミッドが崩れてフラット型の組織になりました。時間制約がない人は全体の3割程度しかいません。”何かしら制約を抱えた人”が4割。年下の上司、年上の部下も増えているので、さらにマネジメントが難しくなっていると言われています。でもこれは仕方がないことです。この状況を受け入れるマネジメントが必要です。つまり、多様な価値観、雇用形態を認めて誰しもが「短い時間でも活躍できる環境」にしていかなければならないのです。

―― 人それぞれの事情を聞いていくのですか?

多様性の時代は「制約社員」の増加が深くかかわっています。育児介護以外にも、ガンを抱えながら働いている方は30万人もいますし、メンタルを壊して働いている方も大勢います。そして、最近増えているのは不妊治療です。結婚家庭の6組に1組が不妊。フランスでは不妊治療はカップルで受けなければいけませんが、日本はまだそうはなっていません。

メルカリでは、不妊治療手当、不妊治療休暇を男性にも適用しています。体外受精は1回30万円くらいかかる。その補助など、会社がサポートする制度があるから、良い人材が入ってきて売り上げが上がっていくのです。今後は外国人・高齢者など、組織で働く人はどんどん多様化していくと言われています。その方たちにあった制度やルールをつくって、現場で運用していくことが求められています。独身の人も多様性のひとつですね。

―― 若い方の働くことへの意識も変化しています。

今の20代も仕事以外でやりたいことがたくさんあります。例えば東京マラソンに出たい、自然災害のボランティアに行きたい、資格を取るために勉強したい、フットサルのチームに入っている、バンドを組んでいるなど、仕事以外でやりたいことを持つ人がたくさんいます。ワークライフバランスで必要なのは、会社や上司が、部下が仕事以外の生活で大事にしたいことや取り組みたいことを持つことへの支援です。

―― 世代間のギャップがありますが……。

昭和の時代に働き詰めだった上司世代と、いまの両立志向の部下世代の意識のズレを修正していかないと難しいと思っています。良い悪いではありません。あの頃はあの頃で良かっただけですから。いまを子育てなどしながら働く部下世代は男性でも育休取りたい人がどんどん増えています。ここで意識を改革し、「イクボス」になった上司が職場の働き方を変えていくことで、部下のモチベーションを上げ、業績も上向きになっていくと思います。

 

 

経営戦略としての「イクボス」

―― イクボス10ヵ条とは?

行動指針として特に目新しい内容ではありません。当たり前のことなんです。

でも日本では、このようなマネジメントについて全く勉強しないまま管理職になっている人も多いのです。これからの管理職は、こういうことも含め勉強していかないと、多様化した組織はうまく運営できないはずです。部下にはいろいろな事情を抱えた人がいます。全てのスタッフに配慮できて、個人と組織を共生させられる「イクボス」が必要です。

―― 「イクボス」に取り組んでいる企業は?

今、「イクボス」に一生懸命取り組んでいる企業はたくさんあります。

カルビーで会長を務めた松本さんは、「長時間労働という悪しき労働慣行が日本をダメにした」「魅力的な人間を増やさないと会社は良くならない。社員が魅力的な人間になるように環境を作るのが僕の仕事だ」「会社や上司が部下の時間を奪ってはいけない」と唱えてカルビーの働き方を変え、ダイバーシティ経営を浸透させ、女性社員がヒット商品を作って業績を上げました。

確かカルビーでは会議が減っていると思います。またある大手企業では、全室ではありませんが会議室を有料にしていますね。使う事業部が会議室のコストを負担する、これも働き方改革のひとつです。皆さんの会社でも会議室を有料にしたほうが良いですよ。そうすれば会議はすごく早く終わりますから。

大和証券は確か11年前から19時退社です。社員が勉強して成長できる時間があるので、投資信託などの営業で顧客の信頼を得て、勝てているんだと思います。SCSKは、昔はSEたちが徹夜して会社の寝袋で寝ていたような会社だったらしいですが、中井戸さんが改革をして、とても良い会社になったそうです。中井戸さんは健康経営も推進しているので、社員の禁煙への取り組みも行っています。

―― 取り組みが遅れると?

いま「マスコミ業界は新卒採用でもそれほど人気がない」のような話をよく聞きます。私たちのころは憧れの業界だったのに、時代が変わってきたということですね。

―― 具体的な効果は?

私が知っている「イクボス」たちは「ワークライフバランスは”福利厚生”ではなく経営戦略である」と皆さんおっしゃっています。「イクボス」を以って改革したほうが利益が確実に上がる、社員も辞めなく定着するから無駄な採用や教育コストも不要になり、さらに利益率が上がると。

サイボウズというIT企業では、採用コストが全くかかっていないそうです。青野社長ご自身も、3回育休を取っています。子育ての大変さがわかっているので男女にかかわらず、時短勤務や、在宅勤務を認めています。社員は自分や自分の家族を大事にしてくれる上司や会社に対する、エンゲージメントや愛社精神が高まってきますよね。どんな人が入ってもその多様性を認め、誰しもが生き生きと働ける環境をつくる。そのために、上下関係ではなく、上司と部下はパートナーシップをつくることが大切なのです。

―― 成果を上げている「イクボス」の共通点は?

4つあります。
・部下をきちんとよく見る・よく知る・関わる
・部下に適切にフィードバックしている
・部下に権限委譲している
・働き方のロールモデルを体現している

私は何百人もの「イクボス」と会っていますが、彼らに共通しているのは、とにかく部下を1人ひとりきちんと把握し、一律で見るようなことはしていません。そして、常にフィードバックして、部下のモチベーションを高めています。さらにしっかりと部下に権限委譲をして、裁量権を持たせていくことをしています。

また先輩から教わった昭和の働き方を一回自分で脱ぎ捨てて、自分自身もやってみて自己改革することもいとわない。これは大切なことです。

―― 部下とのコミュニケーションのポイントは?

部下に女性が増えるとコミュニケーションをとるのが難しいと言う人もいますが、ありのままを受け入れてあげて、大変さにも共感してあげてほしいと思います。そして、いいところを見つけて褒めてあげてください。また子育て中の社員にはその人のライフの事情に合わせたキャリアパスを一緒に考えてあげて、「フルタイムに戻ったら君は幹部になれるよ」と期待してあげてください。そうすると部下は働く「心理的安全性」が高まって育っていきます。

そういうマネジメントができるためには、ボス自身も自身も満たされてないとダメだと思います。自分が過労で疲れきっている、寝不足、健康に不安、家庭に問題があると自分のことで精一杯になってしまうので、部下に対してこういう目線は持てません。

ですから「イクボス」ではボス自身のワークライフバランスが重要になっています。自分に自信を持っている自己肯定感の高い上司の多い会社ではハラスメントは発生しません。

 

 

ボスに言われた忘れられない一言
―― 良い例は?

ある女性が妊娠したことを上司に報告したとき……
「イクボス」の第一声は「おめでとう」です。「予定日いつ? じゃあこれから産前6週間、産後8週間産休だね」「もちろん戻ってきてくれるよね?」「うちね、こういう育児制度があってね」って、制度を自分で説明できたら完璧ですよね。

―― ダメなボスの典型は?

一番ダメなのは「制度とかわかんないから総務に聞いて」みたいな上司です。言われた方は不安になりますよね。

「えっ、妊娠したの!? 参ったなあ……(この忙しい時に)」、かつては「産むのを調整しろ」と言ったダメ上司もいました。

女性の部下が出産したら「もうこの仕事は無理だよね」と重要なプロジェクトからはずしたりする今話題のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)もあります。これが「女性活躍」を阻む一因と言われています。

―― 男性に対しては?

最近は男性もイクメンが増えています。上司に子供が生まれたことを報告して「そうかお前も父親になったのか、一家の家長だな、もっとバリバリ働け」と言う人は昭和の激ボスです。

「イクボス」は奥さんの産後を気遣って、「なるべく残業させないようにするから、君も周りと協力して早く仕事を終えて帰りなさい。そして期間限定の赤ちゃんの子育てを夫婦で楽しみなさい」と言える人です。

5年前は育休を申請した男性部下に「結局男は仕事だろ、何を考えているんだ!」と言った上司がいます。最近は「育休? 会社が推奨しているから取ってもいいけど、戻ってきたら席はないからな」と言われた人もいました。これはもう立派なパタハラ。パタニティーハラスメント。マタハラの男性版、男性の育児参加に対する圧力やいやがらせです。今は法律も厳しくなっているので、もしもこのような会話を録音されて裁判所に訴えられたらアウトだと思ってください。

 

 

イクボスの心得と覚悟

「イクボス」の心得としては、テクニックとかロジックではなく、ハートが大事だと私は思います。

・公平性(Fairness)
・人間性(Humanity)
・正義(Justice)

人間として当たり前なことですが、部下は上司のこういうところを見ています。特に女性が職場に増えたら、公平性を確保しないとすぐ嫌われます。

また、ボス自身が「自分でやる」覚悟を決めると職場が変わります。私の知っている「イクボス」の社長は公用車すら乗りません。もちろんカバン持ちもいません。指示も曖昧には出しません。役職に陶酔するようなこともない。常に社員の成長と、人生の幸せを考えています。

日頃の業務では、「意思決定する」覚悟、「やらないことを決める」覚悟、「部下に任せる」覚悟、「ヒマになる」覚悟、も大切です。

そして、部下のライフもしっかり配慮・応援しつつ、本人のモチベーションもあげていくこと、そしてそれを会社の成果につなげられる管理職「イクボス」を会社が本気で増やすこと。それが良い人材を取れる企業として、必要になってくると思います。

 

 

 

 

 

安藤哲也 Tetsuya ANDO
NPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダー/代表理事
ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO

  • 1962年生。二男一女の父親。
    明治大学卒業後、出版社、書店、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親支援事業を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立し代表に。
    「笑っている父親を増やしたい」と講演や企業向けセミナー、絵本読み聞かせなどで全国を歩く。
    最近は、管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体での研修も多い。
    2012年には児童養護施設の子どもたちの自立支援と子ども虐待やDVの防止を目的とするNPO法人タイガーマスク基金を立ち上げ代表理事に就任。
    子どもが通う保育園や小学校ではPTAや学童クラブの会長も務め地域でも活動中。
    厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」、内閣府「男女共同参画推進連携会議」、東京都「子育て応援とうきょう会議」、にっぽん子育て応援団 共同代表等も歴任。
    著書に『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)、『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパになれた理由」』(廣済堂出版)、
    『パパ1年生~生まれてきてくれてありがとう』(かんき出版)、『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『PaPa’s絵本33』(小学館)など。
    読売新聞でコラム「パパ入門」を連載。

    NPO法人ファザーリング・ジャパン公式サイト

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