インタビュー

2026.06.19


Netflix協賛 VIPO Film Lab 監督コースの挑戦―― ブリス・コヴァン講師と受講生・坂本悠花里監督が語る「俳優から最高の演技を引き出す」極意

VIPO(ヴィーポ)が Netflixの協賛を受けて開催する、海外での活躍を目指す若手映画監督を対象とした「VIPO Film Lab 監督コース」。2022年度に始まり4回目を迎えた本コースは、学びを求める監督たちの熱い視線を集めています。
今回は、 La Fémis(フランス国立映像音響芸術学院、以下 La Fémis )をはじめ世界中で演出の学びを提供するブリス・コヴァン講師と、第2回受講生であり、商業長編デビュー作『白の花実』が第73回サン・セバスティアン国際映画祭「New Directors部門」のクロージング作品に選出された坂本悠花里監督にインタビュー。
本コースの魅力と、撮影現場で活かされた実践的な学びについてVIPO事業企画部/映像事業部の神山が詳しくお話をうかがいました。

(以下、敬称略)

 
 
 

サン・セバスティアン国際映画祭への招待を祝して

 

VIPO事業企画部/映像事業部部長代理 神山(以下、神山)  「VIPO Film Lab 監督コース」 は4回目にして応募者が50人を超えるほど反響があります。それだけ、ブリスさんから学びたいという人が多いのだと思います。
そして、大変嬉しいことに、受講生である坂本悠花里監督が商業長編デビュー作『白の花実』で、第73回サン・セバスティアン国際映画祭「New Directors部門」クロージング作品に選ばれました。
 
ブリス・コヴァン氏(以下、コヴァン)  おめでとう!私も最初の長編作品でサン・セバスティアンに行きました。ヨーロッパの映画界において、サン・セバスティアン国際映画祭にノミネートされることは非常に重要です。他の映画祭に比べても自分のキャリアの礎になりますし、有能な才能を多く輩出しています。世界三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)よりも、サン・セバスティアンに行った方が良い場合すらあります。なぜなら、彼らは一度認めた監督を継続してフォローしてくれるからです。
サン・セバスティアンは「映画らしい映画」を正当に評価します。坂本さんの才能が認められたということですね。素晴らしいことです。


 

ブリス・コヴァン氏の経歴:巨匠から学んだ俳優との向き合い方

 

神山  今回は坂本監督にも同席していただき、一緒にお話しできればと思っています。
まずは改めて、ブリスさんのご経歴についてご自身からお話しいただけますか。
 
コヴァン  私は助監督としてキャリアをスタートし、フランスの多くの監督と共に映画制作に携わりました。25年前に監督になり、同時に La Fémis で教え始めました。数年間同学演出領域のヘッド・オブ・デパートメントを務め、現在は国際部門の立ち上げを行っています。
監督としては長編映画、テレビ映画、そして舞台も手がけてきました。
 
神山  助監督時代には、モーリス・ピアラやパトリス・ルコントといった巨匠たちともお仕事をされています。彼らから学んだことで、今も糧になっていることはありますか。
 
コヴァン  もちろんです。特にモーリス・ピアラは私に多大な影響を与えてくれた大きな存在です。当時私はセカンドADでしたが、彼は私の俳優に対する見解を変えてくれました。俳優から最善の演技を引き出す方法をいろいろな角度から見ることができたのです。そのテクニックには、全く予想していなかった驚きもありました。パトリス・ルコントは現場では常にジェントルマンでしたが、正直に言って、ピアラから学んだことの方が多かったです。
また、ニコール・ガルシアからも多くを学びました。 彼女はフランスで非常に有名な女優でもあります。 彼女は監督として15本もの映画を撮っていて、特に俳優との接し方について多くのことを教えてくれました。彼女の「俳優と共に働く方法論」には大きな影響を受けています。
 
神山  正にいま、ブリスさんが監督たちに教えていらっしゃることにつながっていますね。
 
コヴァン  はい、彼らから多くのことを学びましたが、最も重要なことは、俳優との仕事は「実験」に近いものであり、予想もしなかった結果にたどり着くことがある、ということです。俳優をうまく演出するためには、実験に次ぐ実験を重ねて自分なりのルールを見つけなければならないと深く理解しました。


 

VIPO Film Lab:最高のパフォーマンスを引き出す「ツール」を俳優に提供することを学ぶ

 

神山  今回のワークショップの内容についても、改めてご説明をお願いします。
 
コヴァン  参加者それぞれが選択できる2つの異なるシーン(台本)を用意しました。そこでまずは「ブロッキング(リハーサル)」を行って状況を探求し、次に演出を試みます。重要なのは演出する前に、監督がキャラクターについて抱いているアイデアを詳細に俳優に向けて説明することです。スクリーン上でどのような「個性」を見せたいのか、キャラクターの定義を明確にして共有する必要があります。そのうえで演出するとどのような表現になるか、という内容です。
 
神山  こういったワークショップを始められた時期はいつですか、きっかけは何だったのでしょうか。
 
コヴァン  私のワークショップはLa Fémisで始まりました。フランスでの自作映画の評価がきっかけです。メディアから「俳優がいきいきとしている」と高く評価され、俳優たち自身も私との仕事を喜んでくれました。私にとって「俳優がスクリーンで生きていること」が最重要でしたから、その評価はとてもうれしかったです。
そこからLa Fémisでワークショップをやったところ、非常に人気が出ました。演出部門の責任者も任され、他国からもワークショップの開催を求められるようになりました。ベルギー、イギリス、イタリア、スペイン、台湾、イラン・・・そして10年前には日本の東京藝術大学大学院でも実施されるようになりました。とても面白かったです。(https://geidai-film.jp/)
私は今や、演出のスペシャリストとして認識されていますが、「教える」ためにそこにいるのではなく、参加者に私の経験を「共有」するためにいます。 演出は「科学」ではないからこそ、ワークショップを通して参加者自身が自分なりの演出法を見つけることが重要だと考えています。
 
神山  ワークショップの目的や最終的なゴールはどこにあるか教えてください。
 
コヴァン  ワークショップの目的は、(演技は)境界線や限界を超えてオープンだということを理解してもらうことでもあると思います。監督として、俳優を自由にするためのちょっとした「ツール(道具)」を使えば、彼らから最高のものを引き出すことができる。その方法を理解する手助けをするのです。
ゴールは俳優からベストパフォーマンス、すなわち「最高の演技」を引き出すことです。俳優に「オープン」になってもらうこと。決まりきった「正しいこと」だけを狙うのではなく、俳優を自由にし、信頼関係を築くことで、彼らが自ら見せてくれる環境を作ることが重要だと考えています。
 
神山  それは坂本監督の映画にも表れていると感じますが、やはり教え子たちの作品を見て、ワークショップの成果がダイレクトに見えることはありましたか?
 
コヴァン  はい、私のワークショップに参加した人々からは多くの反響をもらっています。 最近、フィンランドのアールト大学でワークショップを行いましたが、その時参加した2人の学生がベルリン国際映画祭で賞を受賞しました。 彼らは私のワークショップが非常に役に立ったと言ってくれました。 フィンランドでのワークショップは6週間という非常に長いものでしたが、彼らにとって非常に有益だったと言ってもらえて、もちろんとても嬉しかったです。 参加者から良いフィードバックをもらえるのは、常に大きな満足感につながります。
 
神山  日本でのワークショップはいかがでしょうか。率直なご意見をお聞きしたいです。
 
コヴァン  日本人は非常に独特であると言えるでしょう。直接自分の感情を表に出す人が少ないと思います。しかし、俳優に演出をするのは、キャラクターが何を考えているのかを表現して観客に示すことですから、日本人の性質とは全く正反対のことです。最初はうまくいくかどうか、とても不安なところがありました。
実際にやってみると、藝大でも、VIPOでも、参加者が私のワークショップを気に入ってくれたという印象を受けています。
私としてはメソッドを与えるのではなく、俳優からより良いものを引き出すための「ツール」を渡して、参加者が自分なりのやり方を見つける手助けをしていると考えています。
俳優から最高の演技を引き出すこと、それが最も重要なことです。 そのためには、彼らが「表現すること」、あるいは逆に「表現しないこと」を通じて、自分なりの方法を見つけてもらう。そうしたやり方が結果につながっているようです。


 

 
 
 

実践レポート:坂本監督が語る「監督コース」での学び

 

神山  では、ここからは VIPO Film Lab 「監督コース」に参加されて、ブリスさんから「ツール」を引き継いだ坂本監督にお聞きします。
商業長編デビュー作『白の花実』では、ブリスさんからの学びを、実際に演出にも活かしたとおっしゃっていましたが、具体的にどのように活用されたのでしょうか。
 
坂本悠花里氏(以下、坂本)  日本の現場では、監督が完璧なヴィジョンを持ち、スタッフ・キャストがそれに従うスタイルが多いですが、私はもっとコミュニケーションを取りながら作りたいと考えていました。監督のあり方について考えていた時に、ブリスさんのワークショップに出会い、それが自分にとってとても良い経験になりました。
ワークショップそのものの考え方として、「答えを出すのが目的ではなく、挑戦し、試していく場所。最初から完璧な答えなんてなくていい」と言っていただき、そういった哲学的なところが一番勉強になりました。
 
神山  その哲学を撮影現場でどう活かされたのですか?
 
坂本  今回の私の映画は、メインキャストたちがほぼ十代で演技経験が少なく、撮影期間は実質約2週間でした。
 
コヴァン  じゃああなたは2週間で映画を撮影したのですか!驚きです。
 
坂本  なので、限られた時間で何ができるかを考えました。プリプロダクションは半年あったので、ワークショップという形でキャストと向き合う時間をつくりました。
今回、ダンスのシーンがあったので、身体表現─心と体をどうつなげるかというレッスンをしたり、本読みをやったりして、ブリスさんのメソッドを実践しました。
具体的に言うと、まず俳優の皆さんに「正解を求めない。自由に、間違えてもいい」ということを伝え、エクササイズのワークショップをやり、自由に表現してもらえるようにしました。
アクティングのワークショップでは最初に「私はブリス・コヴァンさんという方からこういうワークショップを受けました」とブリスさんのメソッドを紹介して、それはちょっと日本の従来のやり方と違いますよ、と。
正解を最初から求めるんじゃなくて、本読み→ブロッキング→撮影と重ねていく中でちょっとずつ正解という形を作っていきたいという話をしました。
 
コヴァン  少しずつ階層を重ねるように演出していかれたのですね。
 
坂本  撮影に入る前に1時間スピーチしたんです(笑)「私はキャストをコントロールしたいわけじゃない、人形みたいにしたいわけじゃない、だから何でも言ってね。」と最初に説明をしてから始めました。
プライマリー・エモーション※から始めて、そこから重ねていくというブリスさんのワークショップをそのまま使わせてもらいました。
※プライマリー・エモーション:
演技における6つの基本的な感情(怒り、恐怖、喜び、悲しみ、愛、嫌悪)
 
コヴァン  私のメソッドにおいて大切なのは、結果を無理強いしたり、即座に結果を求めたりすることではありません。キャラクターに曖昧さをもたらすために、複数のレイヤーを重ねていき、徐々に固めていくのです。
 
神山  それで、俳優たちの変化や、効果は感じましたか?
 
坂本  ワークショップの時から効果を感じていたので、このやり方は成功するだろうと思っていました。
実際、最初はキャストも「正解」を求めて「監督は何が欲しいんですか?」とコンフォートゾーン※から出てきてもらえないことも多かったのですが、徐々に変化しました。
※コンフォートゾーン:(俳優にとって)快適な領域
 
コヴァン  コンフォートゾーン、よく覚えていますよ。 俳優は常に監督に「何を求めているんですか?」と聞きますね。
 
坂本  はい。最初は戸惑いもあったと思いますが、撮影後にキャストから「プライマリー・エモーションから重ねていくやり方が力になった」「脚本をどう読めばいいか分かった」と言われた時は、ブリスさんの教えの有用性を改めて実感しました。
プライマリー・エモーションという「目印」があるからこそ、不安にならずに冒険できたのだと思います 。
 
コヴァン  素晴らしいですね。
 
神山  そこまで活かしていたというのは私も初耳だったので嬉しいです。
 
坂本  本当にワークショップを受けて感動して、自分の考え方も変わったし、背中をすごく押されました。


 


©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

 
 
 

『白の花実』が世界で受け入れられた理由

 

神山  ブリスさんのメソッドを活かした作品『白の花実』でサン・セバスティアン国際映画祭のニュー・ディレクターズ部門のクロージングに選ばれたわけですが、会場での観客の反応はどうでしたか?
 
坂本  主人公が静けさを持っているキャラクターで、言葉にできない静けさの中に、彼女の葛藤や孤独、存在というものをすごく感じると言われました。その人物が本当にこの世界に「生きている(アライブ)」ように感じると。
 


©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

 
コヴァン  あなたの映画を拝見しましたが、とても気に入りました。特に印象に残ったのは、俳優の「エネルギーの変化」です。
最初、主人公の俳優は多くを見せませんが、映画を通じてキャラクターを大きく進化させましたね。 彼女が十代であることも興味深かったです。
あなたが単に顔立ちやクオリティだけで彼女を選んだのではないことが伝わりました。最初から最後まで、大きな進化を遂げていました。 最後には彼女は本物の女優になっていましたね。彼女は映画の中で素晴らしかったです。 最初と最後で彼女は同じキャラクターではありませんでした。変化している、それがこの映画の強みでもあります。 彼女が物語の中心にいて、演出だけでなくこのキャラクターそのものの力も大きかったです。
 
坂本  順撮りで撮影できたことも良かったかもしれません。
 
コヴァン  2週間で順撮りをしたのですか? それは大きな、そして急速な進化ですね。
 
坂本  私自身も初めての長編映画だったので、2人で一緒に成長しました。彼女は監督がどう撮りたいんだろうと考えてくれるタイプだったんですが、最後の方は彼女から「AとBどっちですかね?」と聞かれて、私が「どっちか考えてやってみて欲しい」と言うと「そうですよね!」と言い合えるようなやり取りができるまでになりました。
 
コヴァン  俳優に自分自身の問いに向き合わせ、自分たちで答えを見つけさせることは重要です。監督から言われて役作りをしたものではなく、彼らの中から生まれてくるものですから。
あなたの映画には、多くのキャラクターが登場する非常に重要なシーンがありましたね。 委員会がやってきて「自殺には誰かが影響を与えたという証拠はなかった」という結果を伝えるシーンです。
彼らが次々と話し出す、あのシーンの演出はとても良かったと思います。 俳優たちも皆、あのシーンでは素晴らしかった。演技の面で非常に複雑で、難しいシーンだったと思いますが。 どのようにして、あの多くの俳優たちを一度に演出したのですか?
 
坂本  まず、このシーンは子どもたちの視点から見るということは決めていました。
 
コヴァン  それはとても良かったと思います。
 
坂本  子どもたちには「大人を上から見ている」という感覚を、プライマリー・エモーションを使いながら説明し、大人たちには「この映画は子供たちの映画で、そこから見られている大人なんだ」ということを理解してもらいました。この映画で大人のキャストには直接プライマリー・エモーションを伝えることはできなかったのですが、私の中で「この人はこのシーンではこういう感情」というのを持って、ズレていたらコミュニケーションを取って、ゆっくりすり合わせていく…ということをやりました。
 
コヴァン  つまり、このシーンで最終的に取り組んだプライマリー・エモーションは何だったのですか?
 
坂本  何だったか、今パッと出てこないのですがキャラクターによって違いました。
 
コヴァン  私は「怒り(アンガー)」だと感じましたが。 最初は「恐怖(フィアー)」だったかもしれませんが、最終的に「怒り」に近いエネルギーと感じました。 なぜなら彼らは真実を語っているからです。 もちろん他にも色々な感情があるでしょうが、観客としてはそう感じました。 彼らは「恐怖」ではなく「怒り」によって生き残ることができるのだと。 あの瞬間、映画に大きな「ひねり(ツイスト)」があったと思います。 彼らが生き残り、リカと主人公が再び友人になれるのだと感じさせてくれました。 編集の面でも、すべてが新しく(フレッシュに)感じられました。
 
坂本  あのシーンは、この映画の中で異質な、感情がグッと変わるシーンでした。映画にツイストがあったとおっしゃっていただけて嬉しいです。
ブリスさんからの学びは、全編を通して活かしています。初めに自分の想いを伝えて、メインキャストに自由にやってもらえるようなチューニングができていたのは大きかったです。すべてのメソッドを撮影で使えたわけではなかったのですが、ポイントポイントで使えたことも俳優とのいいコミュニケーション、信頼関係につながったんじゃないかな、と思っています。
 
コヴァン  そうですね。おしゃっていたように、「撮影時間がない」というような時には、その前の段階でしっかりと信頼関係を築くことが重要だと思います。
 
坂本  ブリスさんの哲学を本当に最初から最後まで活用させてもらいました。自分の監督としてのあり方も、キャストとの向き合い方もそうだし、全体を通して。ただ、技術スタッフを入れないブロッキングについては、時間が取れず、できなかったです。その必要性をすごく感じているので、次は頑張ってできるようにしたいと思っています。
 
コヴァン  今回実現できなかったメソッドはあるかもしれないけれど、坂本さんがほぼ全てのテクニックを覚えていること、それが本当に嬉しい。次の映画では、もっと使えるかもしれません。
また、そこから役者さんの最高なものを引き出すことになるかもしれないと思うので、非常に期待しています。
 
神山  私は撮影を見に行ったのですが、坂本さんがすごく堂々としているというか、監督として迷いがないなという印象を受けました。その理由は今のお話にもあった通り、ご自身の中にちゃんとブリスさんの哲学が染み込んでいて、現場では坂本組の信頼感がしっかりと構築できていた、プリプロの段階からかなり準備ができていたからだと思います。


 

 
 

海外へ羽ばたく日本の若手監督たちへ

 

神山  最後に、日本の若手監督がさらに世界で活躍するために必要なことは何でしょうか。
 
コヴァン  日本の監督たちには海外で活躍できる可能性が多くあると思います。日本の映画には、海外の観客が好む「異なる文化」としての特徴が備わっています。自身の「固有性(スペシフィシティ)」、ユニークなやり方を保ち続けることが重要です。
 
89歳になる私の母は濱口竜介監督の作品が大好きで、足が悪いのに必ず映画を観に行きます。それは「何かを発掘できる別の文化を観たい」からだそうです。彼女はアメリカの映画は好きではありません、なぜなら「アメリカ映画は誰もが理解できるように作られているから」です(笑)。無理にアメリカ映画のように誰にでも分かりやすく作る必要はありません。日本独自の専門性や特殊性を大切にすべきです。
 
日本で10年間教え、俳優たちとも接してきた中で、私も多くの新しいことを発見しました。
とても興味深いと感じたのは、「見せずに見せる(ショー・ウィズアウト・ショーイング)」という方法です。これは非常に日本的だと思います。例えば、フランスなら「それはやりたくない」とはっきり言葉で言いますが、日本では、言葉で「ノー」と言わずに相手に「彼はやりたくないのだな」と理解させることがあります。
 
もう一つ重要なのは、俳優により多くの「空間」と「自由」を与えることです。無理強い(インポーズ)するのではなく、彼らから提案(プロポーズ)させる。監督がしっかりと見守りつつ、俳優を自由にし、彼らが持つ可能性を最大限に引き出す。そうすれば、より大規模な観客に到達できる作品が生まれるはずです。
 
神山  今日は貴重なお話をありがとうございました。


 
 

 
 
 

ブリス・コヴァン(Brice Cauvin)氏

Brice Cauvin(ブリス・コヴァン)氏
VIPO Film Lab 監督コース講師
 
15年にわたり、フランスやアメリカで助監督として、モーリス・ピアラ、パトリス・ルコント、ニコール・ガルシア、ピエール・サルヴァドーリ監督等に就く。ローラン・リュカとアヌーク・エーメ主演によるデビュー作『Hotel Harabati』は2006年ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品され、Variety Award を受賞。現在は、舞台の演出の準備や新作の脚本を手がけるとともに、La Fémis(フランス国立映像音響芸術学院)や世界中で演出についての実践的な学びを提供している。
坂本悠花里氏

坂本悠花里氏 Yukari SAKAMOTO
映画監督/VIPO Film Lab 監督コース受講生
 
映画監督。第2回VIPO Film Lab監督コース受講。
1990年生まれ、埼玉県出身。上智大学で哲学を専攻後、東京藝術大学大学院映画専攻にて編集を学ぶ。2019年公開の『21世紀の女の子』で「reborn」を監督。その後、2019年に制作した自主映画「レイのために」が第15回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門などに入選。長編デビュー作となる『白の花実』はndjc2022「長編映画の企画・脚本開発サポート」にて開発したのち、香港国際映画祭併設の企画マーケット「The Hong Kong – Asia Film Financing Forum (HAF)」にて“ウディネ フォーカスアジア賞/Udine Focus Asia Award ”、”HAF Goes to Cannes Award”を受賞し、ウディネ・ファーイースト映画祭やカンヌ国際映画祭に招待されるなど、作品の完成前から海外でも注目を集め、第73回サン・セバスティアン国際映画祭「New Directors部門」のクロージング作品に選出された。
 
『白の花実』公式サイト
https://www.bitters.co.jp/kajitsu/

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