VIPO

インタビュー

2019.06.24


「アニメーション海外展開サポート アニメピッチトレーニングプログラム」の参加者に聞く。今必要なことと今後の課題
 現在、世界のアニメーション制作のレベルが上がり、次々と発表されている中、日本のアニメーション作品もこれからは世界に売り込むチャンスを多く持つことが大切です。
今回は日本アニメを海外展開するために必要なピッチングのスキルを身につける「ピッチトレーニング」と、実際に英語でピッチングする「ピッチセッション」に参加いただいたアニメプロデューサー5名のうち、2名の方にトレーニングの感想や今後の課題について直接お伺いし、3名の方からはコメントをいただきました。

(五十音順)

(以下、敬称略)

 
 

日本のアニメーションを海外展開させるキーマンを増やしたい

海外でピッチングできる人材を育て、日本アニメの良さを監督の代わりに伝えていく

英語で作品の良さを伝えるために必要なものとは?
 
VIPO統括部長兼グローバル事業推進部部長 森下美香(以下、森下)  10月のJapan Content Showcaseのときに海外のプロデューサーのお3人を招聘して、その方のアニメのピッチングを見ていただいたことがこのトレーニングを行うきっかけとなりました。16件の応募者の中から、海外でも展開できるメンバーを選出させていただきました。1月~3月でトレーニングは終了しましたが、今後も年間を通じて継続することを考えています。 
 
まず、お2人はなぜアニメ業界のプロデューサーになられたのですか?
 
日本アニメーション株式会社 プロデューサー 渡邉龍之介(以下、渡邉)  もともと実写をやっていたのですが、ハリウッド映画のようなものが好きだったので、実写よりアニメだったらそのような絵がとれるのではないかと思ったのがきっかけです。
最初は監督がいいと思っていましたが、実際に業界に入ってからは作品を良くしていくのは制作進行でその中核となるデスクやプロデューサーが非常に面白いと思い目指しました。
 
株式会社Flying Ship Studioプロデューサー 小澤江美(以下、小澤)   前職はWEBのプロデューサーだったのですが、縁あって今の会社でアニメのプロデューサーをすることになりました。実は今回ピッチングした作品がプロデューサーとしてのデビューなんです。代表が会社を立ち上げるときからオリジナルを作ることが目標で、今回パイロット版を作れるチャンスがありました。作品自体は最初から海外を視野に入れていましたが、私自身がプロデューサーとは何かをわからない状態だったので、このトレーニングを受けることにしました。なので、VIPOのセミナーにはかなりお世話になりました。
 
森下  渡邊さんがトレーニングを受けられたのは?
 
渡邉  きっかけは会社からでした。今回の企画で、監督と私で一緒に作品を作りたいとずっと言っていたので、「じゃあ、試してみるか」と、軽い気持ちでスタートさせました。
 
森下  トレーニングを受けて、ご自分の評価としてはどのくらいでしたか? 伸び率はどう感じましたか?
 
渡邉  とにかく、元気に話そうと思ってやりました。海外の方にたどたどしい英語で伝わるかなと心配でしたが、意外に伝わっていたので、良かったと思いました。100点満点だとしたら、僕は120点だと思います(笑)。
 
(一同笑)
 
小澤  伸び率すごいですよね。皆さんから質問が出るということは、理解されていたということになりますよね。
 
渡邉  それがすごくうれしかったです。そういった意味で、120点くらいだと思いました。
 
森下  小澤さんはいかがでしたか?
 
小澤  伸び率で言うと、最初の頃は「マズイ、企画書からやり直さないと」と言うところから始まったので、トレーニングを受けていく中で企画を掘り下げて作り上げたので、そこを含めて100点あげたいです。
 
森下  今回拝見して、英語というよりも、プロデューサーとしてご自身が『かみさまのなきごえ』『チルタとチャンルラ』という作品をどれだけ理解をして伝えていけるのかという作業に時間をかけることの重要性を感じました。
 
渡邉  それがたしかに一番かかりました。自分ではなく監督やクリエイターの考えたことを、短い時間で魅力たっぷりに伝えるためには、自分が一番理解していないといけないので、企画書と説明の仕方にはすごく頭を使いました。
 
森下  小澤さんは日本語でのプレゼンの経験もお持ちだったそうですが、今回のピッチトレーニングで作品に対する理解度は深まりましたか?
 
小澤  はい、とても。トレーニングでは「6センテンスでまとめる」というメソッドが特に役立ちました。「あなたは3つだけしか伝えることができません。どうしますか?」と言われて、すごく新鮮でしたし、そのやり方のほうが自分の頭の中も整理ができてとてもよかったと思います。
 
すごく突き詰めて話せた部分と、作品の中で何が重要で何を伝えたいのか、聞く人が何を知りたいのかを自分で考えられた部分もありました。
 

プロデューサーは孤独な立場だからこそ仲間が必要

5人1クラスはベストな人数
 
森下  トレーニングは5名の方が参加されましたが、他の方を見て、学ぶこともありましたか?
 
渡邉  ありました。スライドに映っている魅力的な資料よりも、みんなの表情やしぐさ、相手に対してアピールできる話し方やちょっとした表情をライブで見て、こうしたいと参考にできました。そういう意味で言うと、5人の参加者がいる中でトレーニングができて、良かったと思いました。
 
小澤  みなさん、それぞれに個性があって、作品に関しての想いもすごく持たれていました。自分がまだまだ考えや理解が浅いなと感じてからは、時間があれば監督やCGディレクターと作品について、より深く話をするようにしました。参加された皆さんのキャラクターへの思いや熱量が刺激となって、私も作品をより掘り下げられるようになっていけました。
 
森下  皆さんの作品を選んでよかったと事務局でも話していました。会社を背負って海外へ出て行こうという気持ちがすごく伝わってきたので、本当に良かったです。5人のみなさんとはその後、連絡を取り合ったりしているのですか?「わたしたちは第1期生」とおっしゃっていると聞きましたが……。
 
小澤  終わってから、みんなで飲みに行って打ち上げをしました。LINEグループも作って、情報共有などして報告、応援し合っています。これからもそのようにしていきたいと思っています。
プロデューサーって結構孤独なので、プロデューサー仲間ができたことでお互いの会社の良いところや、足りないことの話もしています。
 
渡邉  戦友ですよね
 
森下  今回、4人の先生方も本当に一所懸命トレーニングに取り組んでくれましたよね。いかがでしたか?
 
渡邉  本当にありがたかったです。大人になってから、人に話すときの大切なことをいろいろ教えていただける人に出会えるんだって思いました。他の方にも伝えていきたいです。
 
小澤  ダメなところはきちんとダメと言ってくれて、ほめるところはその数10倍もほめてくれました。
 

海外で通用するピッチングをするために大切なこととは

海外に作品を伝えるための視点
 
森下  プログラムは全部で5回ありましたが、「目からウロコだった」部分はありますか?
 
渡邉  いろいろな講師の方に「伝わらない、何を行っているのか分からない」と言われたことが非常にショックでした。これでは良さが伝わらないと監督と考えたことがありました。
 
良さを伝えるためには最初に、「何をどんな目的をもってこの場に立っているのかを伝えるべきだ」と言われたことが、一番印象に残っています。
トレーニングが終わった後でも、文章を書くときや普段メールを書くときでも意識しています。そうすることで、相手との思い違いが起こらないようにはなっています。
 
小澤  先述しましたが6センテンスでの物事の伝え方です。今まで、海外の方がどう思うか考えて作っていなかったので、日本語ではふわっと語っても良かったところも、はっきりさせないと伝わらないという部分がありました。自分の中では情報をきちんと書いていたつもりが抜けていたところも細かく指摘していただいたり、外国人からはどんな質問がくるのかも教えていただきました。日本との違いも感覚がシフトできるように変えられたと思います。
 
森下  3月25日の英語ピッチングのQ&Aで、実際に質問を投げかけられて「外国の方はこんな質問をするんだ」と思ったこともありましたか?
 
小澤  私は「『チルタとチャンルラ』で他に登場人物は出てこないのか?」と聞かれました。実際は全然違うので、「あー、抜けていたんだな」と気づいたことが一番のポイントでした。あとはノウムという小人が妖精の設定なのですが、「フランスだとドワーフ(人間よりも小さい伝説上の種族。童話、ファンタジー作品などに登場する少しいじわるなキャラクター)のような少しいじわるな子のように見えるから、そこがヒットしない要因になるかもしれない」と言われたので、今後キャラクター作りにおいては、本当に考えていかないといけないなとは思っていて、今もどうしようかと考えています。
 
渡邉  そもそもネイティブの方の質問が全然聞き取れなくて、そこはスタッフの方に助けていただいて、なんとか会話をしていた感じでした。実際、少し興味があると言ってくださった方もいて、アドバイスもいただきました。
 

海外で通用するアプローチ方法を身に着けて活かしていくために
 
森下  もう少し時間をかけてトレーニングしたかった部分はありましたか?
 
小澤  皆さん質問のときに作品に対するコメントを出してくださっていて、コメントを理解していないとQ&Aが答えられないので、そこがかなりトリッキーでした。どのような質問が来るのか、想定できることをもう少しトレーニングしたかったですね。
 
森下  海外だとああいうパターンは多くて、Q&Aセッションといっても最初に自分の意見を言うんですよね。セッションの場では質問者も自分を売り込みたいので、大衆の前でいかに自分が理解しているかを話す方も多いです。どういう球が飛んできても、柔軟に対応することは大切ですね。
 
渡邉  コメントだと思って聞いていると、最後に質問がついていたりしたこともあって、難しかったです。今後は、プロデューサーが英語を習得すべきだと痛感しました。
 
森下  英語力以外で、例えばプレゼンの間のジェスチャーや表情、手元をみないようにするとか、苦労されたところはありましたか?
 
小澤  プレゼンを英語で覚えなければいけないということには苦労しました。でも、時間があればできると言うわけでもないと思うので、短い期間で集中して覚えたのがよかったです。とはいえ、あと、1~2回は講座が欲しかったです。
 
渡邉  僕は個人的には2倍くらいほしいと思いました。1つは企画を掘り下げてそれを英語にすることと、2つ目は英語だけで話す練習をしたかったです。
 
森下  私たちも今のままのトレーニングでは時間がかかりすぎてしまって講座を継続できないと思っています。日本語で企画を詰めるにはどうしたらいいのかと、それを英語にする、という2つのことを進めていかなければならないと思っています。
 
理想は両方やったほうがいいと思いますが、企画をブラッシュアップするためのトレーニングと、それをピッチングするための練習のトレーニングの2つに分けると割と短い間でできると思うのですが、それで機能すると思いますか?
 
渡邉  僕はそちらのほうが目標への精度が上がって、よりフォーカスできるのでいいと思います。少なくとも自分はそうでした。企画も固まり切らず、英語なんて全くできず、でしたので、どちらかができているプロダクションもあるでしょうから、分けてやるのはありだと思います。
 
森下  そのほうが参加する方の費用や期間のハードルも下がるかと思っています。今回5人でやって、いろいろな方の企画を見るのはプラスになりましたか?
 
小澤  はい。一緒にやっている人がいるから自分も頑張ろうとモチベーションをキープできました。上達している人を見たら刺激にもなりましたし、一体感も生まれたので、仲間はいたほうがいいと思います。マンツーマンだったら、ここまで成長できなかったように思います。
 
5人という人数は、内容的にも良かったと思いますし、共有ができるのにちょうどよい人数かと思います。
 
また2部構成のお話は、その後に海外への支援がついていないと人数が集まらないかなと思います。中小企業は人手も少ないですし、通常業務がある中で参加することになるので、その後の発表する場がセットであることが、重要だと思います。
 
森下   Kidscreen Summitなど、そこに行くことが決まっている人向けにやればいいということですよね。確かにそうですね。
 
小澤  発表する場に行きたいけど、企画や英語のフォローもあるらしいよという話になれば、そこに向けて、パイロット版を1分でも作ろうという話になるんですよね。企画を練れて、それで短いパイロット版を作って、その間にプロデューサーが英語を習得して持って行けるというのはプロダクション側としてはありがたいので、今後、参加したいという人は増えてくると思います。
 

もっと多くのプロダクションに海外に出て行ってもらいたい
 
森下  3月25日のセッションは会社の方は来ていましたか?
 
渡邉  当社はたくさん来ていました。今、スタジオで企画会議をしているのですが、そういう場で今回の勉強内容や意見の共有をしました。今回は私の部分だけ撮影をさせていただいて、その映像も社内で共有しています。若いスタッフにもこういう風にやらないといけないんだという刺激にもなっています。
 
森下  次の作品を海外向けに作るとしたら、ピッチングを、どんどんやっていきたいと思いますか?
 
渡邉  そうですね。非常に面白いしビジネスチャンスだと思います。当社はこういう機会が一切なくて、今回初めてだったので、これからもやっていきたいと思いました。自分だけではなく、他の社員やこれからの若い世代にも積極的に取り組んでいってほしいです。
 
森下  小澤さんは? 『チルタとチャンルラ』以外ではありますか?
 
小澤  今回のアヌシーでは東京都主催のブースで『チルタとチャンルラ』を出展するのですが、サブ作品として、「あにめたまご2019」で作った作品『キャプテン・バル』も紹介できることになり、バイブルを作っています。今回学んだことを含めて、いただいた教科書などを読み返しています。
 
作品が世界に出ることを助けてくれる人がこんなにいるんだということも分かり、自分が持っていないノウハウも教えていただける場所として、今回のトレーニングはとてもありがたかったです。
 
森下  渡邊さんはいかがですか?
 
渡邉  具体的にどの映画祭かはまだ見えていませんが、なにか映像にして持って行きたいなとは思っています。作品をプロダクションが海外に出していくのは面白いですよね。
 
森下  せっかく海外のマーケットに出て行って、質問や提案をいただいても、「持ち帰って返事をします」というのが日本の今までのやり方でした。持ち帰るとタイムラグのためにチャンスがなくなってしまって、その場で手を挙げた他国の人達にどんどん仕事は流れて行ってしまうので、決済権を持ったプロデューサーがそこに乗り込むのが一番早道だと思い、この企画を立てました。
 
渡邉  今回このプログラムには16のプロダクションが応募されたということですが、アニメ制作会社の数からしてみると、もっとあってもいいと思いました。
 
各プロダクションが強くなるためには、企画があって、クリエイターがいて、プロデューサーがいて、それを買って「いいね」と言ってくれる人がいないとプロダクションとして成立しないと思います。良いプロデューサーや良いクリエイターはいると思うので、海外に出ていくチャレンジをいろいろなプロダクションがしていくといいと思います。
 
小澤  このトレーニングを知らない方も多いと思います。
 
森下  今回、私たちがアニメのスタジオさんに告知をしたのも初めてだったので、これからぜひ増やしていきたいと思っています。制作プロダクションが直接世界へ出ていくことが成功の近道になると信じてやっていきます。
 
小澤   みなさんと知り合えて仲良くなったことも財産です
 
渡邉  仕事を離れたところでフレンドリーな関係がいいです。ちょっとしたことでも相談できますしね。
 
森下  これから海外のマーケットで、あの国のこのスタジオに声をかけられたけど大丈夫かなと思ったときなど、お互いに情報交換ができるといいですね。
そこは私たちVIPOもノウハウが少しはありますので、お手伝いしたいと思っています。本日はありがとうございました。

 
 

小澤江美 Emi OZAWA
株式会社Flying Ship Studio プロデューサー

  • IT系のプロデューサーとして長年、企業Webサイトやコンテンツの企画を担当。
    一昨年Flying Ship Studioに入社し、自社企画・制作のプレプロダクション作品「チルタとチャンルラ」でプロデューサーとなる。

渡邊龍之介 Ryunosuke WATANABE
日本アニメーション株式会社 プロデューサー

  • 日本映画学校(現:日本映画大学)演出コース卒
    実写映画の現場を経て、アニメーション制作会社へ入社
    日本アニメーション株式会社へ移り、新規企画開発プロデューサー、デジタル作画部マネージャーを務める


 
 

◆「人前で演じる力があれば聞いている人を惹きつけられる」
 
永野優希 Yuki NAGANO
株式会社ドリアン プロデューサー

株式会社ボンズにて制作デスク、プロデューサーを経験。2016年に退社し、2017年11月に押山清高とともに、株式会社ドリアンを設立。2019年、オリジナル短編作品「SHISHIGARI」制作。現在、「SHISHIGARI」の長編企画やその他の企画を準備中。
 
Q1. 「ピッチトレーニング」と「セッション」について
トレーニングと実際のセッションの印象、講義の内容についてなど

 日本語でもピッチングする機会がほぼなかった私にとっては、どの講義もとても勉強になりました。JVTAの方々のはっきりと通った声で、ゆっくりとそれでいて適格に講義をされる姿は、こんな風にピッチができれば聞いている人も理解しやすいだろうなと感じました。
 原稿の構成やピッチのやり方など、参考映像も交えてとてもわかりやすい講義だったのですが、実際に自分の作品に落とし込むとなると、とても難しく、毎回アドバイスをいただき、相談しながらなんとか完成までたどり着きました。
 本番は、もちろん緊張しましたが、ギリギリまでJVTAさんにご指導いただけたので、当日のリハーサルよりも本番はよくなっていたと思います。
 質疑応答の時は、質問内容は何とか理解できても、英語で答えられなかったことはやはりこれからの課題です。
 
Q2. 5人でトレーニングを受けたことで、刺激になったことや気づきがあったこと
 5人の中でも常に進行具合が遅れていたので、みなさんに追いつけるように頑張りました。5作品それぞれの特徴があり、そういう切り口で説明するのか、と勉強になりました。すでに海外でのピッチング経験者の方もいて、その生の感想やアドバイスが聞けたこともよかったです。 
 
Q3. 実際に「ピッチセッション」をして自分に何が必要で何が足りないと思ったか?
 英語力が不足していたことは当然ですが、これまで人前に立つ経験が少なすぎたと感じました。英語がうまく話せないとしても、堂々と自信をもってやること、さらに欲を言えば人前で演じる力があれば聞いている人を惹きつけられるのだと思いました。
 
Q4. 今後の展望、具体的なプロジェクト(事業展開)の可能性は?
 2019年のアヌシー国際映画祭で、英語でピッチングすることになりました。このトレーニングで学んだことを生かしたいと思います。
 

◆「自分の企画を見つめ直し掘り下げることから始まった」
 

増田多加恵 Takae MASUDA
株式会社POP-iD マーケティングマネージャー

 
2016年ポップ・アイディー入社。オリジナルキャラクターブランド「POP COLLECTION」のプロデューサーに就任。2018年より本格的にライセンスビジネスに着手。

 

Q1. 「ピッチトレーニング」と「セッション」について
トレーニングと実際のセッションの印象、講義の内容についてなど

 実は、今回のトレーニングの募集を見るまで「ピッチング」のことを知りませんでした。全く英語ができない状態での不安なスタートでしたが、英語以前の問題でした。自分の企画を見つめ直し掘り下げることから始まり、そこからやっと英語がスタートしました。講師の先生方は、レッスン以外の時も質問に答えてくださったり、英文のチェックもしてくれて、サポート体制はバッチリでした。また、アニメ業界に疎い私は日本動画協会の方にもアニメ業界の資料を準備していただいたりとお世話になりました。
 
Q2. 5人でトレーニングを受けたことで、刺激になったことや気づきがあったこと
 3回目までは自分自身に余裕がなく、講師の先生方への依存が強かったのですが、4回目からは仲間意識が急に芽生え、本番後にみんなで打ち上げをした時に初めてゆっくり話すことができて、とても強い結びつきを感じることができました。
 特に印象深かったのは、グループセッションのとき、小澤さんに「アニメの制作会社ばかりの中で、御社1社だけがIP会社なのでアニメーションに引っ張られているけれども、もっとIP会社として突き抜けた内容でもいいと思う」と言われたこと。私一人関西からの参加で、しかもアニメ業界以外という立場上、どうしたらいいのか迷いや戸惑いが多く、途中まで迷走していた私に客観的にそう言っていただける方がいて、一気に目が覚めた感覚でした。これも、一緒に受講しているからこそ気づかせてくれたことと思います。
 
Q3. 実際に「ピッチセッション」をして自分に何が必要で何が足りないと思ったか?
 自分でピッチングする内容を決めてそれを話すのは努力さえすればどうにかなりますが、一番足りないのはセッションのあとのQ&Aでのリスニング能力であったり、ビジネスマッチング時の名刺交換のときの会話力だと思いました。(せっかくうまくいっても、たぶん話が進まないので、通訳を入れるか自分である程度できる英語力は必須だと思います)
 また、ピッチする相手に応じての企画を何通りか作っておき、いつでもピッチできるように練習しておくことも大事だと思います。今はメインキャラクターだけでなく、別のキャラクターなどに関しての企画書を作っているところです。
 
Q4. 今後の展望、具体的なプロジェクト(事業展開)の可能性は?
 今回のピッチングプログラムを受講することが決まって、勢いで台湾の展示会に実際に出展しました。アニメーションだけでなく、ライセンスビジネスとして海外進出の準備を進めています。まずはアジアから進めていき、オートバイレースの本場ヨーロッパへの進出を目指し、現在、各地域で具体的にどのように展開するかを企画中です。
 

◆「プレゼンテーションとピッチの違いを理解できたことは大きかった」
 
吉田 健 Ken YOSHIDA
株式会社ピコナ 代表取締役

2Dタッチの3DCGを得意とするCG制作プロダクション、ピコナの代表。
コナミ株式会社を経て2008年デジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツ研究科 修了。2009年株式会社ピコナ設立。近年は、海外との共同制作や作品の展開に力を入れており、アヌシー国際アニメーションフェスティバルに併設の国際見本市MIFAにて、東京ブースでの出展及びピッチセッションに参加。2016年MIFA出展者。また、フランスのトゥールーズで行われたCartoon Forum2016では、日英共同制作作品「melody makers」のピッチを行い、日本人としてはじめて舞台に立つ。
 
Q1. 「ピッチトレーニング」と「セッション」について
トレーニングと実際のセッションの印象、講義の内容についてなど

 ピッチのためのバイブル作成についてのワークショップや、ピッチに関する理解を深めることが、自社のバイブルやピッチの精度を上げることになり、バイブルとピッチングの資料作成は大事な財産になりました。とくにプレゼンテーションとピッチの違いを理解できたことは大きいです。相手に興味を持ってもらうための飽きさせない工夫や、英語での構成の考え方など、これはアニメーションプロデューサーとしての重要な技術と経験を得る大変貴重な機会でした。
 
Q2. 5人でトレーニングを受けたことで、刺激になったことや気づきがあったこと
 他の受講生がいることによって切磋琢磨され、英語トレーニング、ディスカッションにおいてお互いに精度を高めあう効果がありました。中小企業のアニメーション制作会社として、お互いに似た環境でもあるので、それが最終的に連帯感となって、今後の交流にもつながりました。
 
Q3. 実際に「ピッチセッション」をして自分に何が必要で何が足りないと思ったか?
 英語でのピッチングの構成の考え方が、まだプレゼンテーション寄りであったと思います。ピッチは、相手に投げかけて受け取るキャッチボールであるのに対し、プレゼンは一方通行な印象を与えてしまうと思います。海外のピッチングを見ると、ピッチをする側、聞く側の双方が参加しうるものに感じられ、その経験が足りていなかったことが実感できました。
 
Q4. 今後の展望、具体的なプロジェクト(事業展開)の可能性は?
 今、国際共同制作に向けて、法務・税務周りを含め、スキーム構築の段階に移ることもでき、ディストリビューターとも良い商談につなげていっています。
 


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