VIPOスタッフインタビュー:Takanobu Ozuka

日本のコンテンツを世界へ導く「裏方」の醍醐味
特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)の最前線で活躍する社員に焦点を当てる本企画。今回は、IP展開支援事業部で部長代理を務める尾塚敬宣さんにお話を伺いました。アニメ制作やライツ部門など、エンターテインメント業界でのキャリアを活かし、日本のクリエイターが国内外でより活躍できるように支援する現在の仕事について、やりがいや醍醐味を伺いました。
── 本日はありがとうございます。尾塚さんは現在、IP展開支援事業部で部長代理を務めていらっしゃいますね。まず、現在の業務全体のイメージと、IP展開支援事業部の構成や雰囲気についてお聞かせください。
尾塚:
IP展開支援事業部は、日本のコンテンツ事業者様に対して支援を行うことを目的とした部署です。
具体的には、いくつかの補助金の事務局を運営しており、私はその中でも特に、経済産業省の「J-LOX+」という補助金を担当しています。この補助金は、コンテンツを作るための支援や完成したコンテンツを海外にプロモーションする支援、さらにはコンテンツを作る過程で効率化を図るなど、業界全体に貢献する取り組みをする事業者様を支援するものです。経済産業省の補助金事務局の他、部としては日本芸術文化振興会からの受託事業等も担当しています。
── IP展開支援事業部は、どのような雰囲気で仕事をされていますか。
尾塚:
全体的にはコンテンツ業界を支援する部署なので、基本、みんなエンタメコンテンツが好きです。ゲームだったりアニメだったり映画だったり、スタッフによって興味の対象は異なりますが、流行りのコンテンツなどエンタメの話が話題になることが多く、明るい雰囲気の部署です。あとはやはり、補助金業務を担うため、数字や財務に強いスタッフが多いですね。
── 補助金事務局の具体的な仕事の流れについてお聞かせください。エンターテイメント・コンテンツの話と、数字の話、両面があると思いますが。
尾塚:
国の補助金なので、補助金を利用する事業者様には正しく使ってもらいたいというのが大前提にあります。私たち事務局の仕事は、いかにして分かりやすく使ってもらうよう、応募する事業者様をフォローするかという点が大切です。
業務の流れとしては応募前から補助金支払いまで多岐にわたります。
まず、正しく使ってもらうために、事業者様に向けて補助金の応募に必要な要件やルールを伝える説明会や相談会を実施したり、マニュアルを作成して分かりやすく応募してもらう取り組みから始まります。
 
応募があった後は、審査委員会が判断するにあたり、応募に必要な書類が揃っているかどうかの書類チェックを行います。
 
残念ながら不採択となった場合には、なぜ不採択だったのかを事業者様に説明したり、補助金を活用してもらいたいので再応募を促したりもします。
 
補助金の交付決定を受けて事業を進めた事業者様からは実績報告をもらい、計画通りに事業が進められたか、経費を正しく使っていただけたかを確認します。最終的に検査を経て補助金を支払うというのが、業務全体の流れです。
── 補助金にかかわる事務局の仕事で求められる能力はどういったものでしょうか。
尾塚:
コミュニケーション能力は必要です。対面での説明力だけでなく、メールでどう書けばわかりやすく伝わるかというのも含めて必要となります。
補助金は要件がたくさんあって、応募は簡単ではないので、それを理解していただくためにも、いかに分かりやすく事業者様に伝え、正しく使ってもらうかが、事務局の大きな仕事の1つです。
── ここからは個人的な話になりますが、尾塚さんがこれまで歩んでこられたキャリアについてお聞かせください。
尾塚:
私はエンタメ一筋のキャリアです 。大半の社会人人生を映像の企画やライツ(著作権管理)部門で過ごしました。ジャンルで言えばアニメが多いです。
アニメでは、漫画やゲームのアニメ化やオリジナルアニメの企画を立て、製作委員会を組成し、映像制作からプロモーションまで携わってきました。VIPOに入る直前は出版社に在籍し、ライツ部門で自社の出版物を映像化、商品化、ゲーム化してくれる企業を探し、ライセンス契約やロイヤリティの対応を行いました。海外への出版許諾も行っていたため、海外のブックフェアにも参加していました。
── キャリアの中での達成感として、印象深いことはありますか。
尾塚:
日本全国で放送されたアニメがあるんですが、自分の名前がクレジットに載った時は母親に電話しましたね。その時何かを成し遂げたような気がして達成感がありましたね。
── そうしたエンタメ業界でのご経験を経て、VIPOに入ることになったきっかけやいきさつについてお聞かせください。
尾塚:
きっかけは2020年のコロナ禍です 。出版社でライツ部門を担当していた際、企業と打合せすることが難しい状況で、数字を作ることが難しくなり、コロナの収束が見えない中で、著名人の方が亡くなるニュースなどを見て、人間はいつ死ぬのか分からないな、と感じました。
その時、「正しいことを全力でやりたい」という気持ちが強くなりました。
また、エンタメのブームには若い人の感性が必要であり、自分はある一定の年代を過ぎたら、若い人たちに環境を作ったり、チャンスを与える方に回りたいという考えがありました。VIPOの仕事の紹介を受けた時に、それが「正しいことを全力でやる」という考えと合致すると感じて、入社を決意しました。
コロナ禍を経て変わった支援のフィールド
── VIPOに入った直後は、コロナに対応する「J-LODlive」をご担当されていました。現在は国のエンタメ政策に沿った「J-LOX+」を担当されていますが、この変化についてはいかがですか。
尾塚:
コロナ禍でのJ-LODliveは、事業ができずに大きな打撃を受けている事業者様を支援するというニュアンスが強かったのですが、IP展開支援事業部に異動してからは、「世界を見据えた新しいコンテンツ作りをしている人たちを支援する」という、本来自分がやりたいと思った方にやっと進むことができたかなという感じです。
 
VIPO全体としては、様々な部署が存在しますが基本的にはどの部署も「人材育成」か「コンテンツの海外展開」ということを様々な角度から推進しているという点では、目的はみんな一緒なのかなという印象を持っています。
── 補助金事務局の仕事の醍醐味や、やりがいについてお聞かせください。
尾塚:
この仕事は、デスクワークがメインでオフィスにずっと閉じこもるだけではありません。現地検査などで海外や国内のイベントを見に行く機会があり、そこで実際に、日本のコンテンツが各国でどう評価され、何が求められているかを肌で感じられます。その現場の情報を元に、「より日本のコンテンツが海外に行くために必要なアイディア」「より海外を意識したモノづくりへのアイディア」を考えることが目標であり、大きなやりがいとなっています。
また、過去の補助金の活用事例などを積極的に活用し、補助金制度をより多くの事業者様に知ってもらうための広報的な役割も、現場の情報を活かす大切な仕事です。
事務局のスタッフが頑張ってくれたおかげで、多くの事業者様に補助金を知っていただき、正しい応募や実績報告をしていただける事業者様が増え、クレームなどがない状況が続いていることもやりがいの一つです。事務局として事業者様から信頼してもらっているからこそ、現地検査で伺った際に「補助金をもっとこうしてほしい」という要望も気軽に言ってもらえます。
将来的な目標とVIPOが求める人物像
── 今後、VIPOの中で実現したい目標はありますか。
尾塚:
以前から抱いているのですが、海外で活躍できるアニメの映像プロデューサーを育成するという事業に携わりたいという思いがあります。現状のクリエイターは、言語だけでなく法律の知識が備わっておらず、世界を意識した作品をつくるために産学官が一緒になって人材を育てていく必要性を感じています。
アニメは日本の強みですが、他のジャンルに比べると制作現場の待遇、環境整備が遅れているという課題があると思っています。アニメの制作現場の環境改善に貢献できるといいなと思っています。
── 最後に、これから VIPOで働きたいと考える人たちへのメッセージをお願いします。
尾塚:
最も重要なのは、「エンタメが好きでコンテンツが好きで、何らかの形でそれに携わり、業界の役に立ちたい、貢献したいといった想いがある」ことです。企画力やプログラミング能力は必須ではありませんし、補助金の知識も入社後に学べます。
 
VIPOの業務は、自らコンテンツを企画・制作するクリエイターの仕事というより、後方支援や裏方として業界を支え、環境づくりに貢献する役割となります 。この裏方的な役割や、業界の成長のための環境づくりに理解がある人が、VIPOの仕事には向いているかと思います。
── 大変参考になりました。本日はありがとうございました。