VIPO

インタビュー

2017.12.20


香港、台北、北京、フランクフルト、参加者が語るブックフェア
—出版ライセンス海外展開の現状と課題、成功事例

世界最大の書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア」をはじめ、世界各国で開催されているブックフェア。出版社や版権エージェント、作家、翻訳者など業界関係者が一堂に介し、ライセンスビジネスの商談を行っています。今回は出版業界における海外展開の状況とともに、国際ブックフェアの様子などを、主催者や事務局、出展社の方々にVIPO専務理事 事務局長の市井三衛がインタビューしました。

※五十音順

日本の出版コンテンツを世界に売り込む、国際ブックフェアでの可能性と今後の課題

ブックフェアの特徴と国それぞれの出版ニーズ

2017年に開催した主要ブックフェアの概況

香港ブックフェア 台北国際書展 北京国際図書展示会 フランクフルト・ブックフェア
主催 香港貿易発展局 中華民国行政院文化部 中国新聞出版広電総局(国家版権局)他 Frankfurter Buchmesse GmbH
開催数 第28回 第26回 第24回 第69回
会期 2017年7月19日~25日 2017年2月8日~13日 2017年8月23日~27日 2017年10月11日~15日
会場 香港コンベンション&エキシビション・センター 台北世界貿易センター 中国国際展覧中心新館 フランクフルト国際見本市会場
来場者数 約100万人 約58万人 約30万人 約28万6000人
参加国
地域
37 約60 89 102
出展数 670社 621社 2,500社以上  7,309社
日本企業
団体数
21社 64社 92社 33社

(以下、企業・団体・自治体名等の敬称略)

 

香港はBtoCの盛大なイベント


市井  ブックフェアというと、出版関係者の間ではよく知られていますが、それ以外の方たちにとってはまだ遠い存在という印象があるように思います。それで本日は、出版業界以外の方たちにもブックフェアについて理解を広げていただけるよう、世界各地の代表的なブックフェアのお話を伺うことにしました。

まず、香港のブックフェアについてご説明をお願いします。

丸子  「香港ブックフェア」を主催している香港貿易発展局の丸子です。当局は香港政府に設立された準政府機関で、東京事務所は香港から日本、日本から香港への双方向の貿易振興に従事しています。

当局では年間30本以上の展示会を香港で開催しています。そのほとんどがBtoBの展示会なのですが、「香港ブックフェア」は完全にBtoCのイベントです。2017年で第28回目を迎え、地元香港人からとても愛されているイベントです。

市井  香港の方はどのぐらいいらっしゃいますか?

丸子  来場者の約9割が香港人です。書籍や文具等の購入はもちろんですが、多くの香港人が会場を訪れますので、このフェアに来れば中学校や高校の同級生に会うのも頻繁と聞いています。2014年以降は「香港ブックフェア」の来場者が100万人を超え、今回は出展数が過去最大の670社となりました。香港の人口が約730万人なので、7分の1が来場する香港でも最大規模のイベントとなっています。

これだけ多くの方が来場するイベントですから何か新しい展開はないかと考えまして、4年前から日本文化をPRするジャパンパビリオンを立ち上げました。初年度は、自治体からは和歌山県、新潟市、北九州市が参加し、漫画やアニメなど地元のコンテンツを使って、インバウンド誘致のPRをしました。その後、自治体だけでなく、KADOKAWAや日本政府観光局(JNTO)が参加するようになり、今年は西武鉄道やドン・キホーテ、小田急電鉄などの企業も含めて21社が出展し、過去最大のジャパンパビリオンが形成されました。

市井  今年、日本から出展した自治体と企業の割合は? 初年度に出展した自治体は継続で出展していますか?

丸子  自治体と団体が15団体、企業が6社です。新潟市と和歌山県、在香港日本国総領事館は毎年出展してくださっています。

市井  出展でどのような効果がありましたか?

丸子  日本へ旅行する香港の方は非常に多く、2016年は180万人以上が来日しています。そのうちの約20%は10回以上の訪日経験があるため、日本の各地方への旅行に非常に高い関心を持っています。そのために各自治体の方がプロモーションをして下さり、最大の要因ではないかもしれませんが、「香港ブックフェア」出展から順調に外国人宿泊者数を伸ばしている自治体が多いです。

市井  自治体の展示は旅行博のような感じですか?


丸子  旅行博とは趣が違うと思いますが、来場者の方がブースで地域のコンテンツを体験出来るよう工夫を凝らしたブース展開をされています。今回非常に特徴的だったのは、和歌山県がヘッドギアをつけると熊野古道を散策できるVRゴーグルを用意したり、鳥取県が『ゲゲゲの鬼太郎』と『名探偵コナン』のキャラクターと触れ合えるイベント等を通じ「まんが王国とっとり」をPRされていたことです。

市井  他の国のパピリオンもあるのですか?

丸子  ジャパンパピリオンの他にはEUパビリオンがありますが、彼らは観光やコンテンツのPRは行ってはいないので、日本のこのような取組は来場者にも非常に新鮮に映っているかと思います。

 

日本の出版物に詳しい台北


市井  トーハンさんでは台北、北京など国際ブックフェアの日本事務局をつとめていらっしゃいますね。まず、「台北国際書展」(以下、「台北ブックフェア」)の特徴を教えてください。

内田  株式会社トーハン 海外事業部の内田です。「台北ブックフェア」は60ぐらいの国と地域が参加しています。日本からは64社の出展があります。入場者は58万人。台湾の出展事業者はBtoCの販売を中心にやっているので、一般客の来場が多いです。

日本の出版社が出展する目的は、版権ビジネスです。「どういう本をお探しですか?」「こんな本はどうですか?」「この言語での翻訳はまだありませんから、出せますよ」という商談ですね。ブースで人が来るのを待っているのではなく、出張前から決まっているミーティングを次々とこなしていきます。一方、台湾の出版社のブースでは販売に力を入れていてディスカウントセールをやるんです。新刊も発表するし、それに合わせて新刊だけでなく在庫も一緒に売りつくすという感じです。

市井  大々的に本を販売しているブースが多い中、日本は版権ライセンスを扱っているわけですね。日本のブースでは日本語の本を置いているのですか?

三枝  株式会社ポプラ社 海外事業部の三枝です。「台北ブックフェア」の当社のブースでは、まだライセンス可能な日本語の本をそのまま置いています。台湾では日本語を読める方が多いのもその理由です。それからブックフェア前には、ミーティングする会社に対して、出展書目のリストと内容案内を事前にお渡して、事前に検討いただいています。

市井  基本、ライセンシーを探しに行くという感じですね。

三枝  台湾はかなり日本の研究をしていて、出版社が日本チームを持っています。日本チームには日本語の堪能なエキスパートが揃っていて、自分たちが注目している出版社のホームページを毎日チェックしていると聞いています。新刊や話題になっている本はすべてチェックして、その都度問い合わせがきます。現物がまだなくて、私自身も最後まで読んでいないような本の問い合わせまできます。そういう動きは台湾がいちばん速いような気がします。

市井  出版市場の中で翻訳物はどれくらいを占めていますか?

三枝  台湾の新刊でみてみますと、翻訳ものは1/4の占めているようです。日本、アメリカ、イギリス、韓国はTOP4の輸入国です。マンガの9割は、日本のマンガからの翻訳といわれています。

 

成長を続ける中国でのライセンス市場



市井  北京のブックフェアはいかがですか?

内田  「北京国際図書展示会」(以下、「北京ブックフェア」)は国際ブックフェアで、参加する国と地域は合わせて89です。出展社が2,500以上。そのうち日本からは92社です。入場者は30万人ぐらいです。開催期間は5日間で、水木金がビジネスで、土日が一般の方です。

市井  一般の方もいらっしゃるんですか。そうすると感覚としてはBtoB & BtoCですね。売り手から見て、どんな特徴がありますか?

三枝  2005年頃は、「北京ブックフェア」では、翻訳出版をするためにはライセンス契約をしなければならないということについて理解していない会社が多かったように思います。「これをやりたいです」と言うので、「ありがとうございます。ぜひ契約を」と話すと、「は?」と。「アドバンスを払っていただきます。それから印税率は?」「アドバンスって何ですか?」。そんな調子で、ミーティングほとんどは、契約についての説明で終わっていました。

でも最近は、「どんな条件ですか?」「この本の内容はなんですか?」と聞いてくれるようになりました。また絵本市場が活発なため、期間中はほぼ1日中、中国の編集者とのミーティングで埋まるようになりました。


しかし、今年の1月から中国の法律が変わり、中国国内での翻訳本の出版が厳しくなりました。ですから今年のブックフェアではミーティングがほとんど入らないだろうと覚悟していました。ところがフタを開けてみたら、朝から晩までミーティングという状況でした。

内田  台湾や韓国に追いついた感じがしますね。中国ではまず契約のことから説明しなきゃという感じでしたが、それが5年ぐらいであっという間に追いついてきました。

丸子  ビジネスの額では、すでに追い抜いているんじゃないですか。


三枝  そうかもしれませんね。台湾で翻訳出版している本について、ライセンスの申し込みをしてくる例がまだ多いです。台湾で売れていたから中国でも売れると考えがちなのですが、必ずしも同じではありません。台湾と大陸では国民性が違います。自分の国で紹介したい書籍を見つける人(編集者)が育つのにはもう少し時間がかかるようにと思います。

市井  国によって、ずいぶんニーズが違うんですね。

三枝  はい。国によって好みや選び方が違うので、出展する本については、ブックフェアごとにいろいろ変えています。

私は「ソウルブックフェア」にも参加、出展していますが、少し前の韓国では訪問販売の会社がたくさんあり、50冊とか100冊のセットをまとめて売るスタイルがありました。「セットにしたい」という韓国の会社が多く、契約件数も多かったです。ところがその後不況になり、訪問販売でセット売りする会社が減り、一冊をじっくり検討してから買うようになりました。また、以前は“成功”に関するビジネス書や自己啓発の本が好まれていましたが、今は癒し系の本、詩の本、健康本も好まれているように思います。

市井  紹介する本は毎年、変わるんですか? それとも毎回、同じ物をアピールするというケースもありますか。

三枝   「台北ブックフェア」、「北京ブックフェア」、「ソウルブックフェア」は、ほとんどが新刊です。当社では毎年、約450冊の新刊を出しています。その中から権利処理上、ライセンスすることができる本を持って行くのですが、童話や児童書の分野の場合は日本で流行っている内容やスタイルが、他のアジアではまだそこまで市場で受け入れられていないことも多く、発刊から3年後に求められることもあります。ですから90%くらいは新刊で、残りの約10%は既刊本を選んで出展しています。

 

世界最大級の「フランクフルト・ブックフェア」


市井  ヨーロッパではいかがでしょうか? フランクフルトは世界最大級のブックフェアですね。日本からは何社ぐらい参加していますか?

内田  実は、何社という数え方をするのが難しいんです。日本ブースは日本企業が複数集まって出展していましたが、単独でブースを出展した企業もありました。また、柱のような書棚を作ってモノだけおいている場合もありますし、商談スペースでミーティングをしているエージェントの方もいらっしゃいました。それぞれやり方がバラバラなので全体像をつかむのが難しいですね。

市井  アジアと比較すると、出展企業は少ないイメージですか?

三枝  日本やアジアから「フランクフルト・ブックフェア」に行く場合は、出展するライセンサーより、ライセンシーとなる方が参加されるほうが多いです。


内田  北米でも同様ですが、今までヨーロッパで売れてきた日本の出版物の中心はマンガです。“文字もの”も少しは売れてはいるのですが、先方がこれまで日本に求めていたものはマンガが圧倒的に多かったです。今後欧米に向けてどれだけ“文字もの”を売るかということが、我々が背負っている任務という感じです。

市井  ヨーロッパの方とアジアの方との違いはありますか?

三枝  アジア圏の方たちは、たくさんの物から選ぶのが好きですから、アジアでのブックフェアでは展示物を200冊くらい用意しますが、ヨーロッパの方たちは全く逆で、一度のミーティングで紹介するのは3冊までにしています。あまり多すぎると飽きてしまうようです。あらかじめ相手の会社の好みを把握して、数点だけ用意するようにしています。


また、アジア圏では日本語がわかる方が多いのですが、ヨーロッパでは日本語を見ただけで「わからない」という気持ちになって興味がなくなってしまうので、出展する本のほとんどについて英語の訳をつけています。それから、事前に英文のカタログを見せています。

あとヨーロッパのブックフェア場合は、売り込みの方も多いです。画家や作家さんとかが自分で仮の本を作ってきます。特に日本は未知の国なので、皆さん関心が高いみたいですね。席が空いているときなど、彼らはさっと座って売り込みを始めます。

市井  すばらしい。作家が直接ブックフェアに売込みですか。なかなか日本ではそういうことはないですよね。

三枝  また、日本の本を翻訳出版したいから出版社と契約したいと思っても、日本のコンタクト先がわからないということもよく言われます。

市井  それは今後の課題ですね。

 

海外へ向けたデータベースや権利窓口の公開



市井  ブックフェアでの実物展示だけでなく、その後ウェブサイト等でプロモーションをしていますか?

三枝  当社では昨年からホームページをリニューアルしている最中です。海外の方が当社の本を探そうとしても、日本語では検索できませんから、ISBNや対象年齢別に検索できるようにして、表紙をクリックしたら英語で書かれた内容案内が画面に表示されるようにしてほしい、と要望を出しています。ブックフェアの商談では、みなさん表紙とISBNの写真を撮っていきますし、Amazonなどで検索して、書評を見る方もいらっしゃいますから。

市井  我々は昨年、経済産業省の補正予算で、テレビ番組、ゲーム、アニメ、キャラクター、音楽、映画のなどのデータベースを横断的に検索できるJapan Content Catalog(JACC®)という一括検索システムを作りました。例えば『NARUTO』で検索すると映画、テレビ、アニメ、ゲームなど31アイテム出てきて、コンテンツの基本情報や権利者窓口情報までわかるようになっています。JACC®は現在、世界170か国以上からアクセスがあり、登録データは約12,000です。まだまだ登録データが少ないので、今後も広げていきたいと思っています。

三枝  私が利用しているのは、日本児童教育振興財団(FAJE)が運営するBooks from Japanというサイトです。書籍情報を英語で掲載してあり、海外からの問い合わせがあると、事務局が出版社まで繋げてくれます。FAJEは1967年に設立され、小学館の資金提供を受けているそうです。

 

コンテンツを売り込むための継続プロモーション

ディストリビューターの影響力が大きい欧米市場
市井  海外展開の成功例を教えていただけますか?

三枝  13か国語以上ライセンスしている絵本が数種類あります。また映画化になった小説『あん』(ドリアン助川著)を、10か国でライセンスしています。また『食堂かたつむり』(小川糸著)もイタリア、フランスでは人気です。

市井  小説が映画になっていることは、かなりプラスになりましたか?

三枝  それも確かにあったと思いますが、『あん』の場合は、たまたま業界で有名なディストリビューターの方の目に留まったのです。彼女に任せれば、最低でも6か国でライセンスが取れるという評判の高い方です。まず本のスクリプトを渡して気に入ってもらいました。

ヨーロッパの場合は、ディストリビューターをどう使うかということがとても重要です。ディストリビューターは個人のエージェントのような存在で、私自身が出版社の編集者に話すよりも、有力なディストリビューターから紹介してもらう方が大きな影響力を及ぼします。

市井  コンテンツ投資の連携というか、海外で本が売れたので、映画化とかね、漫画が売れたのでアニメ化とか、少しでも繋がる形をするためにはどうすればいいと思いますか?

内田  例えば版権で商談する時に、フランクフルトでもそうですが、映像化されるかということを必ず聞いてきますね。ですから、日本のコンテンツは出版物だけで終わるものではなくて、アニメ、テレビ、映画……、映像化されることを前提にして作られているんじゃないかって、海外の人も薄々思っています。「映画化される?」「いつ映画になるの?」、そういうやりとりは版権商談の中でも頻繁に行われています。彼らも映像化されたら、日本だけの映像化だけではなくて、その映像がNetflixなどで世界配信されるだろうと考えています。以前に比べて映像の国際化のスピード速くなっていますので、その観点でも日本のコンテンツに注目して商談されています。

 

補助金を活用して海外展開のチャンスを作る



市井  コンテンツのローカライズやプロモーションなどの支援を目的に、国が助成金を交付するJLOP事業についてですが、期待することは何かありますか。

三枝  JLOP事業では、何度もVIPOに足を運び、活用させて頂きました。

内田  ブックフェアもそうですが、当社が担当している他のイベントでも、JLOP事業に申請して出展というお客さまが数多くいます。その一方で、通常の業務をこなしながらの申請手続きが負担なため、申請しないという会社もあります。

交付申請書を作って、海外での商談を行い、現地での記録写真を撮り、事業が終わったら経費の見積書や支払証明を整理して……。大企業ではそうした作業を専門で行う部署がありますが、中小企業は一人一役でやっているところも多いので、どうにか軽減していただきたいなと思います。

市井  JLOP事業が継続される限りは、できる限りの努力は続けていきたいと考えています。JLOP事業は大企業支援に見えるかもしれませんが、採択件数の半分以上が中小企業からの申請です。

内田  ブックフェアは一般に向けたプロモーションだけでなく、出展社とバイヤーをマッチングさせ、商談し、版権を促進することを目的にやっています。JLOP事業などの支援を使って、中小企業がもっと海外に出ていく機会を作ることは大切だと考えます。JLOP事業があることで、海外展開に踏み出せる中小企業の方もたくさんいらっしゃるので、ニーズを汲み取りながらぜひ続けてほしいですね。

 

インバウンド誘致の活用など新たな戦略展開


市井  最後に今後の展望などをお聞かせいただけますか?

丸子  「香港ブックフェア」に関しては、「ジャパンパビリオン」は“インバウンド”というのが一つのキーワードになっています。それを使ってプロモーションしたいという方にさらに利用していただけるようにしたいと思っています。

市井  ターゲット的には日本に対するインバウンドをめざしている方たち、特に自治体だと思いますが、ほかにはどのような方たちが利用できるのでしょうか?

丸子  我々の「ジャパンパビリオン」は、あくまでも書籍の展示会の中でやっているのであって、単なる旅行博とは異なります。今回は自治体だけではなく新たに鉄道会社や量販店が出展してくださいました。彼らは現地の出版社と組んで、旅行ガイド本にいろいろな記事を書いてもらうなどの取り組みをされていました。輸送・小売、旅行業界だけでなく、業界を限定することなく、これからも多種多様な業種の方々に新たに参加していただきたいですね。

内田  当社は「北京ブックフェア」だけでなく、フランスの「ジャパンエキスポ」というイベントの事務局も行っています。ここでは出版物だけでなく日本のコンテンツ文化を紹介しています。そこでオールジャパン文化をアピールしつつ、販売もする。当社は事務局をやっていますからいろいろな経験を積んで、出版以外のさまざまなジャンルを扱えるようにやっていきたいっていうことがまず一つです。

またブックフェアでは、ドラマ化や映画化、あるいは演劇にできないかという話や、キャラクターの商品化、いろいろなコンテンツが形を変えて、最終的に、紙やデジタル商品、アプリだったり、一つの素材からの広がりが増えています。ですから二つめとしては、当社は版権のエージェントで出版物を入り口にしていますが、コンテンツを広く扱える仕事をご紹介して、手助けやお手伝いをもっとやっていきたいと思っています。今後はこのような戦略がもっと増えていくでしょうから、ブックフェアを通してマッチングさせていきたい、力を注いでいきたいですね。

市井  フランスの「ジャパンエキスポ」以外のイベントも考えておられるのですか?

内田  はい。皆さん、北京や台北、フランクフルトやロンドンなどの大きなブックフェア中心に行かれますが、ビジネスとしては、バンコクやベトナム、中東のブックフェアがあります。日本のライセンサーたちの多くはそこまで行ってないので、そのあたりを取りまとめて、いいイベントとして展開していきたいと思っています。

三枝  私は経済が飛躍的に伸びてきて、出版がとても元気なベトナム、タイ、インドネシアなどにも展開していきたいと思っています。ただしそういう地域ではまだ単価が低く、契約すると逆に赤字になるようなこともあります。ですから小さな金額でも契約できるような仕組み……、例えば欧米でやっているようなCo-edition(多言語同時出版)で、皆で制作するような仕組みをはじめに準備して、後からでも参加しやすいようにすることなどができればと思っています。

また欧米にも、当社の一番強いジャンルである読み物系が売れるように、仕込みをしていきたいですね。ただここで問題になるのは、翻訳の壁と予算の問題です。質の良い翻訳者に巡り合っても、予算がない。

内田  欧米に向けて、日本の“文字もの”をずっと売りたいと思っているエージェントとしては、翻訳……内容をきちんと理解してもらうことに、ものすごく高い壁を感じています。

市井  それは日本の全出版社の課題ということですか?

三枝  日本だけでなく、海外の出版社の費用負担の軽減も課題だと思っています。国際交流基金に翻訳出版の補助金がありますが、残念ながら使い易いとは言えません。この制度は、年度内に申請と刊行までが完結しないとダメなのですが、翻訳出版ではそれにあわせることはとても大変なことなのです。また、日本では翻訳者が尊敬されていますが、海外では、何カ国語も話せる方はたくさんいますので、翻訳者はさほど優遇されておらず、日本語の翻訳者が育ちにくい環境です。

翻訳出版してくれる会社にも、国からの補助金が出やすい制度があればよいと思います。韓国の場合は、国が翻訳者を紹介したり、補助金をだしたりしています。日本の出版物を翻訳する際の補助金制度があれば、もっと契約に前向きな海外の出版社が増えるのではないかと思います。

最後に、当社は大手の出版社と比べると規模も社員数も小規模ですが、代理店や地元のディストリビューターの方々と上手くおつき合いをして、海外展開をさらに進めていきたいと思います。

市井  先ほど申し上げたように、JLOP事業の採択件数の半分以上が中小企業ですから、それはとても心強いですね。

皆さん、これからも多面的で国際的な取り組みを積極的に行っていくということでとても楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

※登録商標”JACC”は当機構が株式会社ITSCから許諾を得て使用しています。

内田 明 Akira UCHIDA
株式会社トーハン 海外事業部マネジャー(洋書グループ 兼 国際ライツグループ)
  • 1992年トーハンに入社。貿易担当として海外営業グループに配属。その後、マルチメディア事業部(当時)にて輸入CD仕入担当後、再び海外事業部に戻り、国際ライツグループにて版権仲介エージェント業務にあたる。2017年より洋書担当兼務。

丸子 将太 Shota MARUKO
香港貿易発展局 マーケティング・アシスタント
  • 専門商社で5年間の中国赴任を経て、2013年香港貿易発展局に入局。主にコンテンツ産業を担当し、日本香港間の貿易促進事業に従事。2014年から香港ブックフェア ジャパン・パビリオンの運営に携わり、各地方自治体をはじめとする出展者の取りまとめも行う。

三枝 潤子 Junko SAEGUSA
株式会社ポプラ社 事業開発局 海外事業部 課長


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