韓国コンテンツ振興院 日本事務所 所長 金泳徳氏インタビュー(中篇)

韓国コンテンツ振興院 (KOREA CREATIVE CONTENT AGENCY:KOCCA) 日本事務所 金泳徳所長インタビュー

韓国コンテンツ振興院(KOREA CREATIVE CONTENT AGENCY:KOCCA)
金泳徳所長

INTERVIEW

韓国コンテンツ振興院 (KOREA CREATIVE CONTENT AGENCY:KOCCA) 日本事務所 金泳徳所長インタビュー韓国文化コンテンツにより、国のイメージ、他産業分野でのシナジー効果、ソフトパワーは上がっていますか?

文化コンテンツは機能性を優先する製品とは違って人の心や感性を扱うコンテンツですね。
韓流効果はいろいろな形で出ていますが、たとえば経済的な側面からドラマ、音楽、スターに関わる派生ビジネスも大きくなりましたね。さらに韓国を訪問する日本の方も多くなりましたし、韓国のお酒、食、化粧品の流通などにも影響を与えたと思います。ただ、それだけではないですね。韓国人のイメージとか親近感もアップしましたね。日本の内閣府が発表する外交に関する世論調査では韓国に関して親近感を感じる人の割合が61.8%で、非常に高水準になっておりますが、それは韓流が大きく影響されていると思いますね。
これからの課題は大手メーカーさんとのコラボだと考えています。
韓国の大手企業の製品はドラマや映画などコンテンツがフックとなり、一部のアジア市場や中東などにおいて韓国製品のブランド力が技術力とともに非常に高まってきているといえます。
ソニーがメディア事業をアジア企業でいち早く展開しましたが、サムスン、LG、SKテレコムなども最近になってグローバル展開が見込まれるドラマ、K-POP、3Dなどのデジタルコンテンツに出資、スポンサーになるなど企業努力も強化しています。昨今のウォン安も韓国製品に有利には働いているケースもありますが、安価なだけの評価を払拭すべく、コンテンツと連動した製品、企業イメージアップを相乗効果と捉えている企業は急激に増加しています。
日本でも放映された「アイリス」では、LGエレクトロニクスが日本携帯電話市場での躍進を目的に映像を活用した「アイリス マーケティング」を展開し、経済効果は少しあったようです。イランなどの中東や東南アジアなども、韓流マーケティング効果はでています。 また、2010年5月発表の3D産業振興政策ではデジタルコンテンツ、オンラインでのコンテンツ流通も優先に掲げていますので、「アバター」の出現により、コンテンツとハードメーカの連携も必須であるという認識も急激に高まっています。その他、2010年5月発表の3D産業政策では、ハードメーカー企業との連携も強調されています。コンテンツの出口が多くなっている一方、ハードメーカーにとってテクノロジーで差をつけにくくなる時代において、形のないコンテンツの価値はもっと重要になって来るでしょう。

日本以外での地域での韓国文化コンテンツの浸透状況はいかがですか?

中国、アメリカ、南米にては韓国のオンラインゲームが広く受け入れられています。韓国コンテンツ振興院の統計によると、2009年の韓国ゲーム市場は約6兆5800億ウォン(約4,700億円)と、前年比で17.4%増加すると予想されています。日本が2010年度1200億円程度と予想されていますので、約3.9倍の市場規模となります。海外輸出額も韓国産オンラインゲームはライセンスも増加し、2009年度は約12.4億ドルで前年対比13.4%増です。
ベトナム、ミャンマー、タイ、インドネシア、マレーシアなどの東南アジアでは韓国ドラマが受けています。登場人物、スターに憧れ、ファッションや化粧品にも関心をもってもらっているようです。
例えば、韓国放送局は最初ベトナムや台湾などにおいてドラマの放映権を安価で、時には文化交流名目で無償で提供するなどの戦略をとってきました。それも受けて現地の人々に露出が増える中でヒットが出たりして人気も段々広がっていったんですね。ドラマのヒットなどにより韓国への関心が高まり韓国企業なども韓国スターなどを起用するなどして韓国のファッションや化粧品をはじめ商品や製品、ライフスタイルまで浸透することになっていっています。企業と韓流の相乗効果みたいなものも起きてますね。
「韓国ドラマの三大市場は、「日本」「中国」「台湾」が挙げられますが、中国市場でのドラマや音楽に関しては、海外コンテンツへの審議規制、クォーター制限、違法流通など市場参入に難しい面が多々ありますが、打開策として共同制作や規制のないインターネットにて韓国ドラマを販売し、様々な努力を続けています。中国があらゆる面で大きな市場となっていくのは間違いありませんし、違法や制限が多いからとためらっていては前に進みません。リスクテイキングでの挑戦ですが、今までもこらからも続けていって成果があがることを期待したいです。」そのような民間の努力に政府や韓国コンテンツ振興院なども何か手助けできないかといろいろ頑張っております。

韓国ドラマの三大市場「日本」「中国」「台湾」において、嗜好は分かれますか?

日本では「冬のソナタ」のようなノスタルジーを感じる純愛ものが基本的には人気があるように思えます。日本では総じて若者中心のラブストーリーが多く作られていて、中高年の視聴者が満足されるような’ノスタルジア’の取り入れられたドラマ作りがされていないように感じます。
もちろん、日本に入ってきている韓国ドラマは最初のメローから最近は多様になっていて、ノスタルジックなものだけでなく、スパイ物、ラブコメディー、時代劇、ハイティーンや20代前半の若者トレンディードラマ等も人気が高まってきています。
韓国のドラマの特徴はメローを軸に「家族」「せつなさ」「葛藤」が組み合わされた感じですが、最初の「純愛メロー」をきっかけに突破口が開かれ色々なドラマが入ってきておりそれで韓流ドラマの底辺が拡がりました。

中国でも最初メロードラマから入っていたんですが、日本と違ってノスタルジックじゃなくてトレンディードラマとして受け入れられたんですね。それに家族ドラマも人気でしたね。東洋と西洋がうまく合致されているし、トレンディーに映るようですね。それを機にいろんなドラマが入っていたんですが、特に2000年半ばの「チャングムの誓い」は非常に人気を得ました。しかし、その後中国当局の牽制も厳しくなり中国ドラマのクォリティーも高くなるなどで放送メディアでは以前より勢いはありません。しかし、ネット等では韓国ドラマの人気はもっと熱くなっているようですね。
台湾ですが、日本と違って地上波テレビよりケーブルTVが非常に発達していて、そこを通して韓流ドラマがたくさん入っております。最初はやはりトレンディー風のドラマがたくさん入っていたんですね。しかし、ドラマ制作費より購買単価が高くなり一時量的に減ったこともあります。その後、価格も落ち着いたりしていまはいろんな韓国ドラマが輸出されております。
韓流ドラマのメイン視聴者層は20代、30代のトレンディー思考の会社員女性です。台湾にはドラマの制作能力のある会社が日本や韓国に比べ少ないので、まだまだ参入のチャンスが高い市場と見ています。

韓国コンテンツ振興院 (KOREA CREATIVE CONTENT AGENCY:KOCCA) 日本事務所 金泳徳所長インタビューK-POPアーティストが日本でも著しい活躍をしていますが。

韓国のK-POPアーティストは練習生制度で徹底した実力主義にて厳しい競争を勝ち抜いてきたほんのひと握りの人たちです。韓国の芸能システムでは、アメリカのようなアーティストの絶対権限というよりもプロダクションのほうが強いんですね。そのような競争システムと力構図も今のK-POPの底力になっているのではないと思っております。
しかし、その前のドラマサウンドトラックの人気とか、東方神起とかの活躍が続いてなかったなら、去年のようなK-POPブームは起こらなかったと思いますね。先輩達の活躍のうえで今のK-POPが立っているということを忘れてはならないと思いますね。
また、エンターテインメントの世界はパフォーマンスだけのことではないと思います。やはり日本で活躍の場をもっと広げたいなら日本の方とスムーズにコミュニケーションがとれるレベルの日本語もしっかり覚えないといけないし、日本文化やビジネスもある程度知っておかないといけないと思いますね。それをやらないと歌だけで止まっており、その歌を歌っている人の魅力が伝わりにくいと思いますね。
あと、たくさんの方がK-POPを楽しんでいただいていることはとても感謝しておりますが、アイドルだけではなくていろんなK-POPアーティストや歌がまだまだあるということによりたくさんの方が気がついて頂き、もっとK-POPのことを知るきっかけになれればいいなと思っております。そのためにはもちろん日本音楽関係者との協力関係は欠かせないと思っております。

日本との共同製作に関して現状どういう段階だと思われますか?

ドラマを例にとりますと、2002年に韓国のMBC TVと日本のTBS、そしてフジテレビがドラマを共同製作しましたが、そもそも日韓文化交流を記念した企画でもあり、ビジネス的にはまあまあだと感じました。
2002年の「フレンズ」は両国において最初の本格的な共同制作ドラマとしてマスコミに話題にもなったんが、脚本・演出家共にひとりずつて出したりという対等さを強調すぎたためか、いろいろ試行錯誤があったようですね。
文化交流という名分には非常に大きな反響がありましたが、日韓を行き来する物理的な距離、通訳がないとコミュニケーションが困難な体制、お互いの視聴者が求めるものが違うという格差などいろんな課題というか問題を残しましたね。で、このような対等なレベルでの共同制作システムはビジネス的にはうまくいきませんでしたね。
その後もいろんな試みがありましたが、日韓共同制作・TBSテレビ放送50周年特別企画ドラマ「輪舞曲(ロンド)」では、日本主導で韓国はキャスティングとかで協力するという違うパターンでやりました。そのようなパターンが本来の共同制作なのかについてはいろいろ議論があるかと思いますが、やりうやすいし、今も韓流スターの日本ドラマ出演などが続いていることからすれば、現段階ではいいのかなって思っております。しかし、将来的にはより発展した共同制作はもっと挑戦していくべきだと思いますね。なぜかといいますと、ヨーロッパは国を超えて共同制作が頻繁に行われているんですね。いずれ日韓もそのような時代になってくるでしょう。
いま日韓ではいろんな交流が活発に行われておりますので、日韓同士の文化的共感帯も間違いなく広がると思っております。そのためにも共同制作は徐々にでもいいですから両国でぜひ増やしていただきたいと思っております。
日韓の政府レベルもファンド作り等でバックアップしていくべきだと思っております。

三大市場の2つ中国・台湾とのドラマの共同製作についての状況はいかがでしょうか?

中国に関しては、外国番組に対するクォーター規制もあるので、韓国の放送番組を無制限に中国の放送メディアに載せられないですね。ですので規制の限界を乗り越えるべく、戦略的に共同製作を韓国側から仕掛けています。中国産として扱われば、韓国コンテンツの流通先はより拡大していくと思います。一方、クォーター制限のないネットでは大量に韓国ドラマなどが配信されております。ただ、ビジネスとしてはそれほど大きくないのが現状ですね。
台湾に関しましては共同制作は殆ど行われておりません。そこは中国のように韓国コンテンツへの制度的ハードルがそれほど高くないので、共同制作を行う意味は弱いかもしれません。また、大手のドラマ制作プロダクションや放送局がほとんどなく中小レベルの企業が多いので積極的になりにくいこともあります。ただ、韓国人俳優さんが台湾のドラマに出演されることはたまにありますね。

(取材・文 広報室 小林真名実)


金泳徳所長インタビュー(前篇)
金泳徳所長インタビュー(後篇)

※インタビューは2010年12月に実施