FIX Korea CEO; Incho Choi インタビュー

FIX Korea CEO: Incho Choi インタビュー

FIX Korea CEO; Incho Choi

FIX Korea :2000年に設立されたソフトウェア開発会社。教育、ビジネスソフトを中心に開発してきたが、外部スタッフによる国際チームを組織し、オンラインゲーム開発に乗り出した。
http://www.fixkorea.co.kr/

INTERVIEW

日本のマーケットについてどう思われますか?

日本企業とはソフトバンクとソフトの開発で仕事をしたことがあります。日本のマーケットは大きくて魅力的ですが、参入には難しさ半分、簡単さ半分といった感じです。難しい点は研究をしても、市場動向をよみきれない危険性がある、半分簡単という感じる理由は海外との契約においてAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ ※米国の半導体企業)に全般的なサポートを受けているので、世界のマーケットに参入しやすい側面があるからです。

FIX Korea CEO: Incho Choi インタビュー日本でヒットするコンテンツはどういうものだと考えていますか?

大まかに言って日本市場では小さく、かわいく、装飾性のあるものが受け入れられやすい印象があります。アメリカの嗜好とはまったく違う印象です。一方、韓国ではスケールが大きく、単純明快なものが受ける傾向があるのではないかと思います。
日本人はデティールにこだわる感じで、好みも細分化しているように感じます。

日本の会社が作るコンテンツの印象について

ドラえもん、ワンピース、犬夜叉など挙げればキリがないほど、日本のアニメが韓国で60%以上放映されていますし、アニメは世界最高峰の表現力と技術力をもっています。韓国のアニメや、アニメの制作会社も直接的、間接的にしろ何らかの影響は受けていると思います。
ゲームについては、パッケージゲームやDSやプレイステーションなどのハード面で世界的に流通させたという印象です。

日本のオンラインゲームについてはどう思いますか?

日本企業は特にゲームやキャラクターのライセンスだけ韓国にもってきて韓国の制作会社と共同作業をすることが多いですね。
オンラインゲームに関しては韓国が技術で少し優れているのではないでしょうか。というのは、ゲームに関して韓国人はお金を払わず利用しようするところがあるので、最初は無料でたくさんの人に使ってもらって、それを取り掛かりにして小さなところからお金を使わせて、積み重ねていく。そういうビジネスのスキームで韓国ではオンラインゲームを発展させてきました。そこが日本より先に市場が進み、開発も進んだ理由ではないかと思います。
アメリカではオンラインゲームが早い段階から浸透し、成功していますが、経済がどんどん悪くなっているのも、オンラインゲームが成長している一因ではないかと思います。ハード面にコスト負担が少ないものは制作会社にとっても、消費者にとってもでていくお金を節約できるわけですから。
市場リサーチの大手のニールセン社の調査では、アメリカ人がインターネットを使っている時間の10%はオンラインゲームに費やされているという結果も出ているようです。
韓国のオンラインゲームもアメリカの市場に進出しており、そちらにターゲッティングをしている韓国企業も多いです。
パッケージゲームはオンラインゲームと違い、購入時にまとまったお金をユーザーから頂くので後に課金されたりということはありません。オンラインは逆のビジネスですが、1つのゲームを売ってしまえばそれ以降は新たなシリーズを開発しない限り利益が発生しないパッケージより、最初のお金は少なくても事後の収益の可能性が高いビジネスではないでしょうか。

FIX KOREAはいつ頃オンラインゲームに参入したのですか?

当社はソフト開発、教育ITソリューションなどの分野を主に事業展開してきました。ソフト開発はそのときの利益目的、アイテム課金のあるオンラインゲームの方がランニングの利益を得ることができると思いました。開発が6年前からでサービス開始は今年からとなっています。他ジャンルのIT事業を展開してきた会社がオンラインゲーム開発に乗り出すケースは少なくないですが、企画力や開発力が問われますので簡単というわけではありません。
オンラインゲーム開発の通常の準備期間は2,3年ですが、準備を徹底して大きなマーケットを作りたかったので6年間開発にかけました。
「Tactical Intervation」という対戦型ゲームについてのプロジェクトで、フィンランド、ベルギー、スコットランド、イギリス、カナダ、アメリカ、韓国の7カ国からスタッフが結集し、作りました。
プロジェクトの中心はミン・リーです。彼はベトナム系カナダ人のゲームデヴェロッパーです。全世界的に有名なオンラインゲーム「カウンターストライク」のメイン開発者で、私の欧米での学時代の友人の紹介でコンタクトするようになりました。
「カウンターストライク」はテロリストと対テロ特殊部隊との戦いをテーマにしたファイティングゲームの一種FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)です。それぞれの爆弾の解除、人質の救出などマップごとの目的をクリアするか、敵を全滅させるかでプレイします。2008年のギネスブックには「世界で最もプレイ人口の多いFPS」として掲載されてもいます。
最初に韓国でサービスを開始し、その後他国でもサービスを開始するという方向です。

FIX Korea CEO: Incho Choi インタビュー「Tactical Intervation」のチーム内に日本の開発者がいなくて残念ですが、

日本ではゲームといえば、ゲーム用機器をテレビにつなぐか、専用の機器かでプレイするというのが標準的なスタイルだったかと思いますが、アメリカやヨーロッパではパソコン文化が先にあり、パソコンでプレイするゲームが一般的という背景があります。今までは日本製のソフトやゲーム機器がすばらしかったので、アジアや欧米でヒットし、市場を拡大したわけですが、これからはオンラインゲーム時代が全世界的に到来すると思います。
日本のゲーム企業が世界的にゲーム機の市場をけん引していますが、オンラインゲーム分野では欧米主導型であり、開発力やエンジニアも欧米の方が先をいっています。韓国企業も欧米を見習って発展してきたところも多いかと思います。
「Tactical Intervation」は韓国でサービスを開始し、その後欧米、世界に普及させていきたいと考えていますので、今回は優れた欧米と韓国のエンジニアにてのインターナショナルチームを組織しました。

FIX Korea CEO: Incho Choi インタビューご自身はゲームがお好きですか?

ゲームもですが、アニメやアートなどクリエイティブ、何か作るのが好きで、子どものころから絵を描いて教室に通っており、大学ではCMを専攻しました。
卒業後アップルコンピューターでエンジニアとして働き、今の会社を設立しました。当初は私と数人の会社でしたが、今は社員数21人となっています。韓国では大手コンピューター会社、また、海外での経験を活かし、コンテンツ分野の新ビジネスに乗り出す僕のような若手の起業家が増えているように思います。

ヒットさせるためにはどういう風にビジネスを進めていますか?

最初から開発だけを目標にせず、何がはやっているか状況をみて企画し、テスト用のものを作り、一般の人に体験してもらい、アンケートを実施し、評価してもらいます。
マーケティングは、スタッフ1人1人に会議で担当を決めて、MTGを重ねます。作っているものは先端のものをと心がけていますし、開発に入ると没頭するような状態に陥りがちですが、オンラインゲームの楽しさはコミュニケ―ションによって成り立っていますし、制作者同士のコミュニケーションも大事だと考えています。

社内の人材育成について教えて下さい。

先輩と後輩を競争させたりせず、先輩に新人をトレーニングしてもらうOJTを取り入れています。社内で先輩後輩にプロジェクトをいっしょにやってもらい 結果をチェックしながら薦め貰います。これは自分のエンジニア時代にOJTにてのトレーニングを受けましたし、後輩にもトレーニングしましたが、新人だけでなく、お互いが育ついい機会になると思います。
また、先輩の失敗を新人に繰り返させない、という抑止力になると思います。私は最初会社をはじめたばかりのときに、小さいことを見逃して失敗した経験があります。法律的に契約案件がわからなくて、ソフトを作れば成功みたいな意識でいたところ、法律的に開発したソフトの権利を他社に奪われたことがありました。トレーニングしながら情報共有し、それを繰り返していけば犯す失敗は少なくなっていくでしょう。
今や会社のことがわからず開発だけがんばっていた自分の失敗を社員全員に繰り返させることはありませんし、自分1人だけでやっていても会社は大きくならないので、いろいろな人を育てるのが重要だと思います。

FIX Korea CEO: Incho Choi インタビュー韓国のコンテンツ業界について

韓国人は作り直すのが大好きで、新しいものがあってもすぐに新しいものを求める傾向にあります。
Androidやi-phoneなど新しいものがありますが、それも進化させていくのではないかと思います。日本やハリウッドのOEMとして技術力やアイデア力を蓄積してきたので、コンテンツに関する韓国発の新しいものをソフトもハードも世界に向けて発信させていくのではないかと思います。また、世界に発信していくためのプラットフォームの確保も視野に入れての、世界の国々との共同プロジェクトも増えていくだろうと思います。
日本は古いものを新しく変容させていくのがとてもいいところだと思います。「Tactical Intervation」のインターナショナルチームに7つの国の中に日本がなくて残念ですが、今後はさらに可能性を探っていきたいです。

今後のプロジェクトは?

来年新たなオンラインゲームを企画していて、それにより日本のマーケットにも入っていくことを考えています。
将来的には欧米を抑えて、オンラインのシューティングゲームで世界の代表になれるようになりたいです。

目標:EAE(Electronic ARTS:アメリカのゲームソフト会社)、ソフトバンク、カプコン
好きな日本人クリエーター アニメーション;松本零士
好きな日本のアニメーション:NARUTO、アップルシード、犬夜叉(劇中に強い正義がある人を配する作品が好き)

(取材・文 広報室 小林真名実)